スミシー医ハーサカのブログ

医学部に入学してから卒業するまでのたわいもない話

#11 人生における勝者とは? -医学生って”勝ち組”なのか-

The winners in life

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

新たなことに挑戦!ということで始めたブログ活動ですが、

Twitterやnoteでもアカウントを作って記事の投稿宣伝を行う様になり、

”ブロガー”として半人前くらいにはなれたでしょうか?笑

 

世の中には様々なジャンルでブログ活動をなさっている”先輩方”が

ごまんといらっしゃいますが、そういった方々の中に私のブログを

見てくださっている方がおられると最近気づきました。嬉しい限りです!

また、ブロガーでもなく医学生でもない方々にもお越しいただいています。感謝です!

 

というわけで、今回は、トピックは医学部のままで、

医学生ではない方にも読んでいただけるような内容でお届けしたいと思います。

 

それでは参ります!

 

 

・医学部を目指すということ

過去の記事を読んでくださっている方はご存知かもしれませんが、

私は祖父の病気を理由に医師を志す様になりました。

私が保育園〜小学生低学年の頃より、病気に苦しむ祖父の姿を見てきました。

幼心ながらお医者さんになって祖父の病気を治してあげたいと思いました。

 

それからごくごく普通の学生生活を送り、

将来の進路について本格的に考えなければならない時期がやってきました。

それまで親の言う通りに進んできた人生でした(別に不満はありませんでした)が、

「医学部を受験する」とあっさり決めてしまいました。

私の中ではこれしか考えられなかったという感じでした

医学生となって数年後、「あんたは誘導されたんやで」と親に言われました。

私の人生、主体性なくないですか?何も自己決定してないやん笑)。

 

受験勉強は大変でした。

前提条件として、通学に片道8km、自転車で30分ほどかかります。

また、運動部に所属していたので毎日19時以降の下校となりました。

帰宅時すでに20時近く、夕食や入浴を済ませると、早くても21時です。

そこから授業の予習復習を行います。

それが終わってからようやく入試対策のための勉強を始めます。

これらすべてを終えた時には夜の2時は越えています。

学区が広いこともあってかどの部活も基本的に朝練はないので、

8時半くらいから始まるホームルームに遅刻しないよう家を出ます。

そのため、7時くらいには起床しなければなりません。

つまり平日の睡眠時間はだいたい4〜5時間です。

この生活を高校3年生の夏に部活動を引退するまで続けます。

 

引退後は17〜18時くらいには帰宅できるので、

就寝までの、夕食と入浴を除いたすべて時間を勉強に費やします。

部活動のために体力を回復させる必要がなくなったので

朝の3〜4時くらいまで勉強しても平気でした。

 

当然、授業中は居眠りをしま…せん!私は自他共に認める真面目人間です。

提出物はすべて期限までに出し、体調不良以外の理由で学校を休みません。

そういったところが認められ、何度も学級委員長を務めました。

小学校から高校まで成績がオール5だったのは私の努力の結晶です!(褒めて褒めて)

部活動だってそうです。こうした努力の甲斐あって、

部活動では3年間レギュラーとして出場したりキャプテンを任されたりしました。

 

自慢はこのくらいにしておいて、

これほどのバイタリティがあっても受験期はとてもしんどいものでした。

大学入試とは何が出題されるのか、教科と出題範囲以外に何もわかりません。

さらに医学部受験には、センター試験(今は共通テストですか?)で

最低でも9割取らないといけないとか(※二次試験だけの大学もあります)、

みんなが正解できる問題を取りこぼしてはいけないとか…

難しい問題を解ける学力の高さに加え、

どんな問題が来ても大丈夫という完成度の高さも求められます。

というわけで、受験勉強はやり足りないことはあってもやり過ぎることはないのです。

そんな終わりのない戦いに、みなさん耐えられるでしょうか?

 

私の場合は、高校生最後の夏休みは返上して、家族が出かけている中、

一人家で黙々と何時間も勉強していました。

睡眠と食事と入浴以外のすべての時間を勉強に費やしました。

もちろん、ハロウィンもクリスマスもお正月もすべて返上です。勉強するのみです。

(初詣に行き合格祈願したのを忘れていました。嘘つきました、ごめんなさい。)

 

正月過ぎればセンター試験まではあっという間です。

センター試験当日は緊張と寒さからくる手の震えで

問題冊子を包むフィルムを破るのにとても苦労したのを覚えています。

センター試験が終わり、極度の緊張状態から解放されたのも束の間、

センター試験の自己採点で一喜一憂したのちに、

予測される得点で今後がプチ地獄か地獄かが決まります

(天国か地獄ではありません。受験期に天国なんてないです、はい。)。

 

数週間の生き地獄を越え、いよいよ本番の二次試験。

生きるか死ぬかもう一年頑張るかの大勝負!緊張でペンが動きません☆

医学部の場合は筆記試験に加えて面接試験もあります。

口から出るのは志望動機ではなく、心臓でした(バックバクのドッキドキ。)

 

余談ですが、医学部だけ面接試験があるのおかしくないですか?

医学部には変な人たくさんいますよ?

面接で学生の何を見てるのか、今でも疑問です。是非なくしてください。

あ、それだと超ヤバい奴が医学部に来ちゃいますね…

 

すべての試験が終わり、合格発表がなされる前に卒業式を迎えることになります。

これもやめてくれませんかね?笑 

大学に進学できるのか決まっていない状況で、正直、心から卒業を祝えないです。

大学の掲示板に自分の受験番号が載っているのを目にするその瞬間まで

心が休まる瞬間なんてこの小心者にはありませんでした。

 

私の場合、幸運にも医学部に現役合格することができました。

ようやく肩の荷がすべて下りました。

大学生になるまでのひとときは、それはそれは最高でした。

 

しかし、医学部は甘くはなかったのです…

 

 

医学生になるということ

大学生活がスタート!

夢にまで見たキャンパスライフに胸躍らせながら、医学部での6年間を歩み始めます。

高校生までとは違い、色々なことが私たち大学生を待っています。

興味のあることを学ぶことができ、サークル活動にアルバイトもできる様になります。

大学の長い休暇を使ってたくさんのワクワクを経験することもできます。

 

しかし、そんな楽しいことだけではありません。

大学生は一人の大人として扱われます。

自分に関するあらゆることは自分で責任を取らなければいけません。

高校生までは学校の先生や保護者が面倒をすべて見てくれるので、

学生は自分のやりたいことに集中することができました。

しかし、大学生になると種々の手続きやスケジュール管理などは

全部自分一人で行わなければなりません。

いつまでもお子様気分でいると、

履修登録で失敗したり出席必須の講義を忘れていたり、

取り返しのつかない過ちを犯したりしてしまうでしょう。

 

さて、医学部についての話をしましょう。

(もしかしたら他の学部にも当てはまるかもしれませんが、そこはご勘弁。)

医学部では、多くの学生が「留年」の二文字に怯えながら大学生活を過ごしています。

なぜなら、他の学部よりも進級判定が厳しいからです。

一般的に、試験に落ちてしまった場合、再試験を受けることができます。

再試験にも合格できなければ「落単」となってしまいます。

そして、獲得した単位数が各大学の定める基準に満たなければ留年となります。

他の学部であれば、物によっては単位が足りなくてもある一定の学年までは進級でき、

それまでに必要な単位を揃えていればよいとされることが一般的だと思います。

しかし、医学部では学年ごとに取得しとかねばならない単位がいくつもあり、

それらが足りないまま進級することはできないとされおり、

中には一度試験を落としただけで留年となってしまうような恐ろしい大学があるとか。

 

肝が据わっているのか、実家が太く留年を恐れていないのか、

それとも余裕で合格する自信があるのか、

試験が近いにもかかわらず勉強せずに飲み歩いているような学生もいますが、

試験がストレスとなって体調を崩したり精神面で不調をきたしたりしてしまう人も

少なくないというのが実情です。

 

心身が蝕まれるのは試験だけではありません。

だいたい2年生で受講する解剖実習や

4年生あるいは5年生から始まる臨床実習などの実習も中々にストレスフルです。

原因は多岐にわたります。

朝早く遅くまで拘束時間が長いこと。

長時間同じ姿勢を取らされ、会話や飲食もできない状況下に置かれること。

一緒にいたくない人と同じ実習班になってしまうこと。

パワハラモラハラ、時代錯誤も甚だしい老害に、サイコパス

入学当初のカリキュラムに大きな変更がなされ、それに振り回されることもあります。

「あれ?これが俺/私のなりたかった医師なの?」と思ってしまうかもしれません。

 

6年生が近づいてくると初期研修先を決めるためのマッチング活動を開始しますが、

これも結構ストレスものです。

「医学部って就活しなくてもいいんじゃないの?」と思っている人もいるでしょうが、

このマッチング活動はいわば医学生版の就活です。

研修先として考えている病院にアポをとって見学に行きます。

採用するのに相応しい人材かどうかチェックされていないか周囲の目に怯えながら、

研修の内容、お給料、休日の暮らし方などなど知りたい情報を聞き出します。

研修医だけでなく院長や部長といった偉い方との面談が控えていることもあります。

見学が終わればすぐさまお礼のメールを送ります。

これを何度も繰り返します。

採用試験が近くなれば、本命の病院に最後のアピールに行くこともあります。

大学にもよりますが、マッチング活動のための期間は設けてくれないので、

実習の合間を縫ったり実習をサボったりして見学に行かないといけません。

病院によっては事前課題を課してくるところもあり、

実習や迫る卒業試験や国家試験の勉強をしながら、

履歴書・願書とともに事前課題を仕上げなければならず、骨が折れます。

当然、採用試験も病院見学同様、実習や試験の日程と相談しながらになります。

 

医学部では心身が休まる時があまりありません。

常に何かに追われながら、別の何かをこなしていかなければなりません。

万が一、何かに足を引っ張られようものなら、

それが原因でズルズルと落ちるとこまで落ちてしまいます。

 

人の命を救うのはそれほど難しいということなのでしょうか?

医学部を卒業することさえ容易ではありません。

人々の病気や怪我を治したくて医学部に入った自分が心身を損ねてしまうなんて

おかしな話だと思いませんか?

 

 

・医師は”勝ち組”

よく医師は”勝ち組”だと言われます。

経済面から見ると確かにその通りかもしれません。

また、職業を聞かれて医師と答えると明らかに周囲の反応が変わります。

これは医学生にも当てはまります。

大学生ですと答えた時よりもすごいねえ、偉いねえとチヤホヤされやすくなります。

世間様の医師に対するイメージのお陰でしょうか?

それとも過酷な受験を乗り越えたことへの讃美からでしょうか?

いずれにせよ、医学生であることを悪く言われたことは、私はまだありません。

 

しかし、先ほどチラッと話したように、

医師という職業の実情は世間のイメージとは異なることが往々にしてあります。

医学の知識や技術に優れ、なおかつ人徳も備わっているような、

聖人ばかりでは決してありません。

地位や権力、実績の上にふんぞり返っている傲慢な医師もいますし、

自分のことあるいは金やモテることにしか頭に無いような医師もいますし、

他人の気持ちの分からないひとでなしの医師もいますし、

激務に追われてすっかり荒んでしまった医師もいます。

真っ当な医師ほど損をしているのでは?と思ってしまうことがあります。

上司や同僚、他の医療従事者、患者やその家族に恵まれなかったために、

”勝ち組”のイメージとはかけ離れてしまった医師も少なく無いと思います。

「金はあるけど、〇〇はない。」

お金と引き換えに何か大切なものを失いかねないのが

”勝ち組”と呼ばれる医師の正体なのではないでしょうか?

 

 

・それなら医学生はどうなのか?

医師は”勝ち組”ではないかもしれないのであれば、

医師の卵である医学生も”勝ち組”には含まれないのでしょうか?

 

ここでその答えを出してしまうのはとても難しいことなので遠慮したいところです。

 

先ほど話したように医学部の6年間は決して楽なものではありません。

医学部を卒業した先に、明るい未来が待っているとも限りません。

 

とはいえ、医学生の時点で将来を悲観するのは時期尚早だと私は考えます。

少しずつですが世の中は変わりつつあります。

多様な生き方、価値観、考え方が認められるようになってきました。

医師の世界でもそうなることを大いに期待しています。

 

医学部に入り、医療界の知りたいことも知りたくなかったことも知りました。

医師になることで得られることも失うかもしれないこともわかりました。

それでも医師になりたいという気持ちに変わりはありません。

何年も前から望んでいた医師にもう少しでなることができるのです。

夢や希望を叶えられたのならそれだけで十分”勝ち組”だと信じたい。

そして、医師を目指して頑張っていた頃の初心を忘れずにいることができれば、

”勝ち組”であり続けることができると願いたい。

心が折れそうになった時はいつでもこのブログに戻ってこようと思います。

 

 

・誰だって”勝ち組”になれる

私の考え方では、誰しもが”勝ち組”になることができると思います。

何も医師を目指す必要はどこにもありません。

自分の本当になりたいものやりたいことに向かって直向きに努力すれば良いのです。

 

もし、自分の子供が医師になりたいと言い出したらどうするか?

まだ私自身医師として働いたことがないのでなんとも言えませんが、

今の私のところに到達するまでも中々に険しい道のりでしたから、

自分の子供には同じような目に遭ってほしくはないなあとは思いつつも、

それが我が子の望んだことであれば、

親としてそして先輩として、温かく見守ってやりたいと思います。

 

 

・最後に

なぜ今回、「人生の勝者」などというテーマで記事を書こうと思ったのか?

 

最近の話だが、両親が親戚に対して、「息子は医学部に行ってます」と答えると、

その方から「あらまあ偉いわね〜うちの息子とは大違いだわ」と言われたそうだ。

私は「それほどまでに医学生とは特別な存在なのだろうか?」と疑問に思った。

 

うちの祖父も私が医学部であることを近所の方々に自慢して回っていたと聞いた。

小学校や中学校の同級生にも「医学部行ったの?すげー」と言われる。

祖父の自慢の孫になれたことは素直に嬉しいし、感心されるのも正直嬉しい。

しかし、何か違うような気もした。

 

これまで様々な人と関わってきて、「立派だな、見習いたいな」と

思わされるような素晴らしい人に何人も巡り合ってきた。

そんな彼らだが、みんながみんな医師あるいは医学生ではない。

ごく普通のサラリーマンだったり、土木業の方だったり、飲食業の方だったり、

あるいは工学部の学生だったり、バンドマンだったりと、本当に色々な人だった。

彼らに共通しているのは、今の自分に誇りを持って今を精一杯生きていることだ。

私の目には彼らは輝いて見えた。彼らこそ真の”勝ち組”だとそう感じた。

 

みなさんも、肩書きや置かれている状況などにとらわれず、

自分を大切にし、自分を愛し、そして自分を信じて、

必死になって今目の前にあることに取り組んでみてください。

 

 

            「幸運は用意された心のみに宿る 」

        " le hasard ne favorise que les esprits préparés "

                           

                          Louis Pasteur