スミシー医ハーサカのブログ

医学部に入学してから卒業するまでのたわいもない話

#14 FIFA ワールドカップ カタール 2022開催! -サッカーと医療-

World Cup

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

4年に1度のサッカーの祭典、ワールドカップが始まりましたね!

我らが日本代表はグループリーグ初戦にて格上ドイツから金星をあげ、

決勝トーナメント進出に大きな弾みをつける結果となりました。

 

この歴史的大勝利の立役者となった浅野拓磨選手ですが、

ワールドカップ開幕の数ヶ月前に大怪我を負ったばかりであり、

そんな状態の中代表に選出された彼に対し、

「十分なパフォーマンスを発揮できるのか?」と

多くの人が疑問や不安を抱いていたと思いますし、私もその一人でした。

 

浅野選手は内側側副靱帯と呼ばれる部位を損傷しました。

さて、内側側副靱帯とは身体のどの部位を指すのかご存知でしょうか?

 

正解は…膝関節の内側にある靱帯のことを指します。

 

ちょっと寄り道

 ちなみに、医学用語では内側と書いてないそくと読みます。従って、「内側側副靱帯」は「ないそくそくふくじんたい」と発音します。

 では、なぜ「うちがわ」ではなく「ないそく」と言うのでしょうか?それは、「ないそく」の意味が「うちがわ」とは異なるため、読み方を変えて区別しているのです。同じ理由で外側がいそくそとがわとで区別します

 一般的に、内側(うちがわ)とは、「ある物や仕切りの中のほう」を指します。ところが、内側(ないそく)とは、「正中に近いほう」を指します。正中には真ん中という意味があるように、人体における正中とは身体を右と左に二等分する(仮想の)線あるいは面であり、ちょうど頭のてっぺんとおへそを通ります。

*正中の定義はどこを基準にするかにより異なりますが、ここでの基準は上記の通りとさせていただきます。

 つまり、「気をつけ」の姿勢では、手のひらを太ももにくっつけると思いますが、手のひら側が内側(ないそく)、手の甲側が外側(がいそく)になります。また、「バンザイ」の格好では、腕の親指のある側が内側(ないそく)、小指のある側が外側(がいそく)になります。

 上記の通り、どちらが内側/外側であるかは体位や姿勢によって異なります。それによって混乱を招かないようにするために、解剖学では基準となる体位が存在します。これを解剖学的正位と言い、手のひらを顔と同じ正面に向けた状態で直立した姿勢がこれにあたります。解剖学には、独特な表現方法が内側と外側といった位置関係の他にもたくさんありますので、気になる方はぜひ一度調べてみてください。

 

よって、「内側側副靱帯」とは、膝の中の方にあるのではなく、

右膝なら膝の左側面、左膝なら膝の右側面に位置する靭帯のことを指します。

「靭帯」とは関節を構成している骨同士をつなぐ役割を果たしています。

内側側副靱帯の場合は、膝関節を構成している大腿骨(太ももの骨)と

脛骨(すねの骨)をつないでいます。

 

関節は、曲げ伸ばしなど、腕や脚の目的に応じたさまざまな動きを可能にしています。

関節の動きを自由にすればするほど多彩な動作が可能になりますから、

自身の身体を道具として扱うサッカーのようなスポーツでは

関節の重要度が極めて大切になってくることは言わずもがなでしょう。

しかしながら、関節の可動域を拡げれば拡げるほど、

人体の構造としては非常に脆弱なものとなってしまいます。

関節のダイナミックな動きと構造物としての強度のバランスを

うまく保ってくれているものこそが「靭帯」になります

 

靭帯のキャパシティーの中で関節は自由自在に動くことができますが、

激しいスライディングやタックルを受けたことなどを契機に

関節が限界以上に動いてしまうと靭帯はダメージを負ってしまいます。

靭帯は線維と呼ばれる糸のようなものがいくつか束になったようなものですが、

この線維がどのくらい障害されるかによって靭帯損傷の程度が分類されます。

一部の線維が断裂してしまった場合、軽い腫れと痛みで済むことが多いです。

しかし、断裂した線維が多いと腫れや痛みといった症状は強くなります。

すべての線維が断裂してしまった場合は激しい痛みや腫れに加えて、

関節がより不安定になり、歩行などの日常動作に影響が出ることもあります。

 

靭帯損傷の代表的になものとして、膝の前十字靭帯の損傷や、

足の外側靭帯の損傷(足首の捻挫)がありまして、

内側側副靱帯の損傷もよく見られる靭帯損傷の一つに数えられます。

 

 

スポーツ選手として、実力をフルに発揮することと怪我をしないこととは紙一重です。

得点しようと積極的にプレーすれば身体にかかる負荷もその分大きくなりますし、

他の選手との接触などからくる外力による身体へのストレスも増えていきます。

優れた結果を残すためにはこれらの障壁を乗り越えなければなりませんが

無理をすれば体を壊してしまい、活躍することはおろか、

2度とプレーすることが叶わなくなってしまうケースも残念ながらあります。

 

身体のメンテナンスを徹底して行う自己マネジメント力と、

そして万が一故障してしまってもそこから這い上がることのできる逞しさを

兼ね備えていることがスポーツマンにとって重要な要素であります。

浅野拓磨選手は、これを高いレベルで持っていたからこそ、

ここまでの活躍を成し遂げてこれたのだと、差し出がましいながら私はそう思います。

 

 

コスタリカ戦には負けてしまったものの、

スペインに勝てば日本代表は決勝トーナメントに進むことができます。

引き続き、我らが日本代表を応援していきましょう!