スミシー医ハーサカのブログ

医学部に入学してから卒業するまでのたわいもない話

#23 第117回医師国家試験の振り返り 第1部

A look-back on the exam -Part 1-

 

皆さん、ご無沙汰しております。

スミシー医ハーサカです!

 

既にTwitterにてご報告させていただいたように、

無事に第117回医師国家試験に合格することができました。

これにより4月から医師としての人生を始められるようになったわけですが、

立派な医師になれるようこれまで以上に精進し、

お世話になった方々への恩返しをしていきたいと思います。

 

さて、今回は、第117回医師国家試験で出題された問題についての振り返りです。

全400問振り返るのは大変なので、印象に残ったり話題になったりした問題に限定させていただきます。

 

そして、この振り返りは2部構成とさせていただこうと考えています。

第1部の今回は、個人的に印象に残った問題を紹介することで、

私の国試の回想にお付き合いいただきたいと思います。

第2部では、正答率の低い難しい問題や私が良問だと感じた問題の中から、

将来国試を迎えるであろうみなさんに知って得てほしいことを伝えられたらと考えています。

 

久々の投稿となり、皆さんをお待たせしてしまったので、

御託はこのあたりにして、早速本題に参りたいと思います!

 

 

お断り

問題の内容に触れる前に一つ断っておきたいことがあります。

文量などの理由により問題文、画像および選択肢は記載しておりません。

予備校が公開しているものや今後厚労省が公表するものを参考にしてください。

 

個人的に印象に残った問題

A1

本問はその内容というよりも、第117回の記念すべき1問目ということで採用しました。

ここ何年かの第1問は難しいイメージがあったので気合を入れて臨みましたが、

大したことはなくて拍子抜けしてしまったのを覚えています。

 

ただ少し意外だったのが、初っ端から「3つ選べ」の出題だったことです。

複数解答の問題から始まった模擬試験を受験した記憶は私も私の友人にもありませんでした。

 

今回は正解がすぐにわかったので「3つ選べ」に動揺することはありませんでした。

ですがもし解答に自信を持てていなかったらその後に悪影響を及ぼしていたかもしれません。

模試はあくまでも模試だということを忘れないようにしましょう。

 

 

A23

たこつぼ心筋症が国試史上初めて正解となった問題でした。

出るぞ出るぞと言われ続け、満を持しての登場でした。

 

臨床実習で循環器内科を回る度にたこつぼ心筋症の心電図や諸画像検査の結果を見せていただきました。

専門の先生方にとってもいつ国試で出題されるか注目のトピックだったのだと思います。

 

A23がどのような問題だったかと言いますと、

本症例の特徴的な心電図や、他疾患の除外に必要な冠動脈造影検査の所見も示されており、

初登場に対してお膳立てがなされたとても親切なものでした。

今後はたこつぼ心筋症をテーマとした、より凝った出題がなされるかもしれないですね。

 

実習でお世話になった先生方のおかげもあり、

たこつぼ心筋症のデビューを楽しめるほどの余裕がありました。

真面目に実習をやっているとこの様な良いこともありますからしっかり実習に励んでくださいね!

 

 

A42

潰瘍性大腸炎の症例問題でした。

現病歴や下部消化管内視鏡検査の結果から潰瘍性大腸炎が疑われた症例でした。

しかし、「60歳」という年齢が妙に引っかかりました。

高齢発症も稀ではありませんが、潰瘍性大腸炎といえば若年者の代表的な疾患であり、

私の記憶の限りでは高齢者の炎症性腸疾患からの出題はありませんでした。

 

実臨床は教科書通りにはいかないのだぞと言われているようでした。

 

 

B40

これはTwitterでも少し話題になった問題です。

医師が診察のために病室を訪れたところ異状死体を発見したというシチュエーションでした。

この状況下でその医師が次に行うべき適切な対応を問う問題であり、

当然、その医師は「異状死の届出」を行わなければなりません。

ところが、「清掃の指示」という選択肢を選んだ人がいるという情報がツイートされ話題に…。

他人の失敗を笑うのは良くないですが、これに励まされた人もいたようでした。

 

 

C20

国際生活機能分類ICF)に関する出題でした。

同じテーマからの出題は過去何度もなされており、勉強はしていたつもりでした。

しかし本問では、ICFへの理解の未熟さを突きつけられる結果となってしまいました。

予想正答率も一桁台ととても低いものであり、多くの受験者が面食らったのではないでしょうか?

 

ICFの目的とは、「“生きることの全体像”を示す“共通言語”」だと厚労省は言います。

病気や障害を持った特定の人だけではなくあらゆる人々の間の共通理解に役立つことを

目指そうとするその姿勢は誰もが持つべきものであるとは思います。

だからといって重箱の隅をつつくような問題でICFについての理解を問うのはおかしいかなと思いました。

 

 

D1

創部の写真からその原因を推測する問題でした。

過去問にもいくつか同じような出題がなされているのですが、私はなぜかこの手の問題が苦手です。

予想正答率が90%台とものすごく高く、「みんなどうして分かるの?」と疑問でした笑

自分でいうのも何ですが、成績上位者である私にすら苦手分野はあり、

正答率のとても高い問題であっても間違えてしまうことは往々にしてあります。

ですから、一般・臨床の問題で少々ミスしてしまっても、

ライバルたちもどこかでミスをすると思って最後まで諦めずに解き切りましょう!

 

 

E30

問題文を数行読んだ段階で、「あ、反復・習慣流産かな?APSかな?」と思いました。

しかし、「いずれも胎胞が膨隆し…」という一文と、

「これまでの精査でAPSは認めない」との但し書きにより、

頭の中が「?」でいっぱいになってしまいました。

恥ずかしながら「胎胞の膨隆」が何のことだかわからずお手上げでした。

 

今年は産婦人科の問題が目立ち、しかも癖のある問題が多かったように感じました。

友人は、「産婦人科学会が『君達の合否<運命>を握っているのは我々だ。』

とでも言っているかのようじゃないか!」と冗談を飛ばしていました。

 

 

E33

研修医と指導医の会話の中から誤っている箇所を選ぶタイプの問題でした。

このタイプの問題では、途中まで完璧な対応を見せる研修医が

突然人が変わったようにポンコツを繰り出すのが個人的なツボで、

毎回心の中でツッコミを入れざるを得ないのです。

 

 

E46

予想されていた新型コロナウイルスからの出題は少し意外な形でなされました。

 

新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者に対して行う検査について問われました。

素直に新型コロナウイルスPCR検査を選びたいところでしたが、

「息子の陽性が判明した時点で、本人は無症状だったが自宅にあった鼻腔ぬぐい液の

新型コロナウイルス抗原定性検査を自身で行い、陰性だった」という文言により、

「だったらインフルエンザウイルス迅速抗原検査も適切なのでは?」と、ややこしくなりました。

 

このような問題の場合では、臨床実習で見たことがヒントになると思い、

これまでの実習を思い返してみたのですが、「いや、どっちも見たわ!」…

この問題の設定が冬でなければインフルエンザの線は切れたでしょうが、

不幸にもそのような記述はどこにも見当たりませんでした。

 

時期や施設などにより対応が異なることからの出題はぜひやめていただきたいものですね…

 

 

F42

オピオイドローテーションからの出題でした。

これまでオピオイドローテーションは、

「行うべき適切な対応はどれか?」という問題の正解選択肢として登場するくらいのものでしたが、

本問ではまさかのその内容にまで突っ込んだ設問でした。

オピオイドなんて副作用と簡単な処方のルールくらいのことしか知らない学生に、

この問題は難しすぎやしませんかねぇと思っていましたが、案の定採点から除外されました。

 

人間は誰しもミスを犯すものですが、

国家試験くらいは不適切問題のなきようにしてほしいところです。

 

 

F71

A-aDO2を計算により求めさせる問題が出題されました。

それを導出するための公式はそれほど複雑なものではなく、

何回か問題を解きさえすれば誰でも得点できる格好の得点源<カモ>です。

 

ではなぜそのような問題を取り上げたのかと言いますと、

その公式には「150」という近似値が使われることがあるというのが理由です。

今回は、近似値を利用する箇所が与えられた数値によって計算可能でしたので、

「150」ではなく計算により導いた値を使用して解答するのが正答でした。

答えの導出には最後、四捨五入が必要となるのですが、

「150」を使用した場合とそうでない場合とでは答えの最小の桁の数字が異なるという結果が待っていました。

この点に関してネット上ではちょっとした騒ぎになっていました。

 

 

F75

第117回の最後の問題も採用しました。

F74に対しては、「150」を使うのと使わないのどっちが正解なのか、

あるいはどちらとも正解なのか、当時は気になったものでしたが、

「150」を使わなかった方のみが正解となることに対して、

納得のいかない人はほとんどいないでしょう。

 

しかし、本問F75に対しては、出題そのものに対して不満を抱く者は少なくないでしょう。

なぜなら、推定細胞外液量を算出する公式の存在が明確には存在しないからです。

「ヒトの身体の約60%が水分で、そのうちの約3分の1が細胞外液」ということから

解答を導き出すのが正解とされているようですが、

A-aDO2の算出と比べると曖昧な点が多いように感じられました。

これがラストを飾る問題かと思うといささか残念な気持ちがしました。

 

 

最後に

本来であればもっと多くの問題を取り上げたかったのですが、

国試終わってからとても忙しかったのであまりブログ活動できないでいた間に、

当時感じたり考えたりしたことの多くを忘れてしまったため、

紹介できた問題は思ったよりも少なくなってしまいました…

 

次回の振り返り第2部では、いつか国試を受験されるみなさんに、

少しでも多く”国試のエッセンス”を受け取っていただけるよう心がける所存です。

ピックアップする問題数もできる限り多くしますので、記事がアップされた際にはぜひご一読ください。