スミシー医ハーサカのブログ

医学部に入学してから卒業するまでのたわいもない話

#24 第117回医師国家試験の振り返り 第2部

A look-back on the exam -Part 2-

 

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

今回は「第117回医師国家試験の振り返り 第2部」として、

国試の実際の問題から国試合格のためのエッセンスをみなさんにお届けする回です。

 

勉強法に唯一解はなく、多くの”正しい勉強法”がこの世に生み出されています。

ただ、そのすべてが自分に合うことは決してありません。

そして何より採択できる勉強法は一度に1つのみです。

 

過去に私が、私の中で一番良いと考え実践してきた勉強法をお伝えしたことがありますが、

数多い勉強法の中から自分に合っているものを見つけそれを実践していくのは各学生の務めです。

”最適解”を見つけるまでに紆余曲折あるかと思いますが、

いかなる勉強法を選んでも重要な学びのポイント<エッセンス>があるはずです。

これを踏まえていれば、勉強法がなんであれ勉強時間さえ確保していれば、

医師免許は確実に得られるとさえ考えています。

 

今回は「エッセンス」を第117回の問題の中から抽出し、みなさんにお伝えしたいと思います。

ただ、国試合格に必要な要素をすべてお伝えすることは到底不可能です。

「エッセンス」と大層なこと言って割に当たり前すぎることを書いていることもあるでしょう。

しかしそこは、一介の国試合格者のブログでの独り言と思って、目を瞑っていただけると幸いです。

 

それでは最後までお付き合いください!

 

 

 

カテゴライズしながら勉強しよう!

A4は急性好酸球性肺炎についての出題でした。

 

この問題に正解するには、

「急性好酸球性肺炎の病初期では末梢血好酸球数の上昇を認めないことがある」

ということを知っているだけで事足りました。

 

ところが予想正答率は芳しくありませんでした。

「そんな細かい知識なんて知らないよー」という人が多かったのでしょうか?

しかし、インフレが進んでいる昨今の医師国家試験では、

詳細な知識を問う問題は今後増えていくのではないかと思っています。

 

疾患ごとのウェイトが大きくなっていく訳ですから、知識を整理しながら覚えていく必要があります。

そこで、知識をカテゴライズして覚えることをお勧めします。

 

急性好酸球性肺炎においては、A4の各選択肢を見てもらうとわかるように、

「間質性肺疾患の1つであること」、「本疾病ならではのこと」をおさえた学習が重要です。

 

「IL-6の上昇」は、間質性肺疾患であることが自ずと思い出せます。

もし、選択肢が「%VC<80%」であっても想起できるはずです。

 

注力すべきは、「若年者の喫煙が発症の契機となる」や、

ステロイドへの反応が良く再発も少ない」などの特徴的なことです。

間質性肺疾患であるがゆえの症状や検査所見は、間質性肺疾患の勉強時に頭に叩き込んでおき、

急性好酸球性肺炎の勉強時には本疾患が間質性肺疾患に属するということをおさらいする程度にします。

 

カテゴリーの利便性は、単に一度に記憶する量を減らすことだけにあらず、

その知識が想起しやすい様に頭の中にしまっておけることにもあります。

 

カテゴライズするということは1つ1つの知識を1箇所にまとめたり結び付けたりすることです。

問われている知識をピンポイントで思い出せなくても、

関連する事柄に気づくことができれば芋蔓式に欲しい情報にたどり着けます。

 

カテゴライズするには「共通点」の存在が必要です。

知識を分類してながら勉強することで「共通点」を見出す力を養うこともできます。

”共通”点がわかれば”相違”点もわかるはずです。

これは鑑別疾患を挙げる上でも一役買うであろう貴重な力です。

 

 

意識下から無意識下へ

A39は色素性母斑を診断させる問題でした。

 

皮膚科では常に「悪性黒色腫なのかそうでないのか」という問題がつきまといます。

ひと昔前であれば皮膚科は悪性黒色腫、乳腺外科は乳癌にしておけばよかったのですが、

国試のインフレーションが進むにつれてそうとは限らなくなってしまいました。

 

本問でも悪性黒色腫か色素性母斑かで迷った人が大半なのではないでしょうか?

悪性黒色腫の肉眼所見の特徴として「ABCDE」の5つの所見があったと思います。

この「ABCDE」に注目しながら写真を見てみれば悪性黒色腫ではないことがわかるはずです。

 

さて、私が言いたいことは「ABCDE」の重要性ではありません。

ここで一度、病理学でのスケッチを思い出してみてください。

課題をさっさと終えようと先輩にもらったスケッチの模写に一生懸命ではありませんでしたか?

特徴的な所見があっても先輩の描いた通りに描きその所見の名称を添えるだけ。

このようないい加減なことをしているからいつまで経っても病理画像や皮疹画像がわからないのです。

 

画像というのは、関心、知識といったものがあるのとないのとでは見え方は全く異なります。

美術館を訪れたとして、観たい作品があるわけでもなく仕方なく来館したという人にとって、

目の前にあるアートはただのモノとしか感じられないと思います。

しかし、作品に込められた作者の想いや意図ついて知れたり、

家族や友人、恋人のお気に入りの作品だと分かったりした時、

ただのモノとしか思わなかったはずの作品が違って見えるはずです。

 

病理画像や皮膚疾患の画像も同じです。

画像を見る前にしっかりその疾患についての知識を仕入れておき、

画像のどこに着眼すべきなのかきちんと把握しましょう。

何を見れば良いのか分からないのであれば分かる人に尋ねましょう。

 

そうやって意識して画像を観るように普段から心がけましょう。

次第に意識しなくてもできるようになります。

 

スポーツでも楽器の演奏でも自動車の運転でもそうですが、

その道の達人というのは重要な所作や工夫を無意識下で行うことができます。

しかし、達人も初めは一つひとつ注意しながら行っていたはずです。

 

「病理、皮膚疾患苦手〜」などと言ってないで、

大事なポイントを一つひとつ丁寧に抑えながらやってみましょう。

そうすれば画像問題も怖くなくなっているでしょう。

 

 

医学界のトレンドを把握せよ

A73は成人の心房中隔欠損症の問題でした。

 

成人先天性心疾患とは先天性心疾患を有していた患者が成人に達したことを意味します。

従来であれば成人を迎える前に命を落としていたものが、

医療の進歩により成人してもなお生存できるようになって来ました。

その一方で、先天性心疾患患者が大人になることで抱える新たな問題も顕在化してきており、

「成人先天性心疾患」というワードにはそういった概念も含まれています。

 

先天性心疾患の患者が小さいうちであれば小児科にかかるのは何も問題はありませんが、

成人してもなお小児科に通い続けることは一般常識からしてみればおかしなことに感じられます。

ですが、その患者にとって信頼できる先生は生来お世話になってきた小児科医であり、

成人したので他の先生に診てもらってくださいというのは残酷な話ですし、

普段成人の相手をしている先生がいざ先天性心疾患を診ろと言われても無理だというのが実情でしょう。

 

このほか、先天性心疾患の女性患者の妊娠・出産などの問題もあり、

成人先天性心疾患にどう向き合うかが今後ますます重要になってくると思われます。

 

「現代医療の重要課題についてもちゃんとアンテナを張っていますか?」

という意図がこのA73には込められているように感じられました。

 

ではどうすれば医学界のトレンドに関する情報を入手できるのか?

それには臨床の現場に身を置くことの他にはないでしょう。

トレンドとはその世界に住む者が作るものです。

ここまで言えばお分かりですよね?

そうです、臨床実習で入手するのがイチバンです。

 

 

一方通行な知識はNG

C70は急性大動脈解離から心タンポナーデとなった症例に関する3連問のうちの1題でした。

 

今回は勉強法というよりは問題の解き方について書きます。

実際に解答するときに使うのもありですが、

特に過去問演習など問題を解くことによって学習する際に使用してほしい方法です。

 

本問は、「この患者の心エコー検査で認められる所見はどれか」という問題でした。

急性大動脈解離および心タンポナーデで見られるだろう所見を予想して選択肢を選ぶの人もいるでしょうが、

ここでは選択肢にある所見がどのような状態の人に見受けられるのかを先に考える方法をお勧めします。

 

「拡張期の右室の虚脱」というのが正解の選択肢でした。

右室の虚脱という馴染みのない言葉に当選択肢を選ぶのを躊躇してしまったのでしょうか?

では、肺胞の虚脱ならどうでしょうか?これならなんとなくイメージがつきませんか?

肺胞は外気を取り込むことによって膨らみますが、膨らめないことを虚脱と言いました。

右室は全身の血液が還ってくる場所ですので、拡張期に血液が右室に流入してこないと虚脱となります。

拡張期の右室に血液が流入しない原因を考えてみましょう。

心タンポナーデや緊張性気胸といった心外閉塞性ショックが思いつくはずです。

 

「『A』という病態では、『B』という所見が見られる。」という一方通行な知識は役に立ちません。

各論のサマリーを見るだけの勉強を行っているとこの”一方通行”に陥ります。

 

「『B』という所見は『C』のために認められ、それには『A』が該当する。」

この向きで考える訓練には過去問演習が最適と考えます。

選んだ選択肢の正誤にこだわるのではなく、

選択肢の内容をしっかり吟味して根拠を持って解答できたかにこだわりましょう。

 

 

おわりに

当初の予定ではもっと多くの問題を取り上げる予定でしたが、

思いのほかブログを書くための時間を確保することができず、

たったの4問しか書けませんでした…。

ですが、小生のブログを見て下さるような殊勝なみなさんであれば、

自分の力だけで国試合格を掴めると信じているので、まあ良いでしょう笑

(じゃあこの記事書くなよ…)

 

もし、国試の勉強など、医学部でのことで悩み事や困り事があれば気軽にご連絡ください!

当ブログは私が初期研修を始めても暇を見つけて細々と続けていくつもりですので、

新しい記事をアップしたときにはぜひお越しください!

それではまたお会いしましょう!