スミシー医ハーサカのブログ

医学部に入学してから卒業するまでのたわいもない話

#17 合格率90%⁉︎ 「医師国家試験ってどんな試験?」

National Examination for Doctors

 

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

先日、今年度の医師国家試験の会場が発表されました。

医師や歯科医師、看護師、理学療法士などの医療従事者を目指す者は

年に一度行われる医政局所管国家試験を受験し合格することでその資格を得ます。

大学入試、CBT・OSCE、卒業試験など数多の試験を乗り越えてきた医学生

待ち受ける最後の関門となるのがこの医師国家試験(以後、国試)というわけです。

ラスボス的立ち位置にある国試ですが、その難易度は如何なるものか?

今回は「国試」をテーマとしてお話をさせていただきます。

 

 

国試の概要 

国試についての簡単なまとめを先に示しておきます。

  • 日程:2月上旬〜中旬の2日間(土日)
  • 会場:12の都道府県
  • 問題形式:各論、必修、総論の3つ
  • 問題数:1日につき各論75問+必修50問+総論75問 × 2日分=400問
  • 試験時間:各論165分、必修95分、総論150分 ➡︎ 2日で13時間40分
  • 合格基準①:必修のみで80%以上の得点 <絶対基準>
  • 合格基準②:必修以外で例年70%前後の得点 <相対基準>
  • 合格基準③:禁忌肢3問以下(年度による) <絶対基準>
  • 合格するには合格基準①、②、③のすべてを満たす必要がある

では各項目について説明していきます。

 

日程

国試は例年2月初旬〜中旬に2日間(土日)の日程で行われます。

今年度の国試(第117回)は2月4日と5日に実施予定です。

第114回から今年度の第117回までは2日制となっていますが、

第113回までは3日制でした(出題数も100問多い500問でした)。

 

国試に再試・追試はありません。

試験当日に37.5度以上の発熱が認められた場合、

他の受験生への感染の恐れからその受験者は受験が認められません。

国試を突破するには勉強面だけでなく健康面でも気が抜けないのです。

 

会場

国試の会場は13の都道府県(北海道、青森県宮城県、東京都、新潟県、愛知県、

石川県、大阪府広島県香川県、福岡県、熊本県、そして沖縄県)で行われます。

 

基本的には最寄りの会場で受験します。

 

問題形式

国試の問題を分類する方法はいくつかありますが、

ここでは各論、必修、総論という分け方についてご紹介します。

 

国試は6セクション(A~F)に分かれており、A~Cは1日目、D~Fは2日目に実施されます。

そして、AとDは各論、BとEは必修、CとFは総論という内容の問題で構成されています。

 

各論とは疾患ごとの知識を問うものです。

例:第116回 A1 の問題

睡眠時無呼吸症候群による高血圧について、正しくないのはどれか。

a 夜間高血圧となることが多い。

b 肥満患者では減量を推奨する。

c α 遮断薬が第一選択薬である。

d 家庭血圧では早朝に高血圧となることが多い。

e 持続的気道陽圧法(CPAP)で降圧が期待される。

このように、国試の問題は基本的に5択問題であり、マークシートに解答します。

例題は睡眠時無呼吸症候群からの出題でしたが、

テーマとなる疾患は問題ごとに変わります(*同じ疾患から複数出題されることもあります)。

どの疾患の何についてどのように問われるのかは事前には知る由もありません。

疾患の数はごまんとあるのですから、国試勉強がいかに大変であるかが窺い知れると思います。

 

ちなみに答えは「C」です。

少し難しい内容になりますが…

睡眠時無呼吸症候群は文字通り、寝ている時に無呼吸になってしまう病気です。

原因はいくつかあり、その中で最も多いタイプが閉塞型です。

閉塞型では、アデノイドや下顎の発育不全、肥満などによって口・鼻から肺までの空気が通る道(気道)が

狭められることで、体は呼吸をしているんだけれども体内外の空気の交換はなされないために、

体内(血中)の酸素が不足してしまいます。これに伴い交感神経の働きが活性化されてしまい、

やがてそれが睡眠中に限らなくなって持続的なものとなり、高血圧症を合併してしまいます。

そのため、いびきや中途覚醒、日中の過度な眠気といった直接睡眠に関わることが問題になるだけではなく、

高血圧により心臓や血管の病気を合併し、それが原因で命を落としてしまうことも恐るべき問題です。

減量するなどにより気道の閉塞を改善したり、呼吸をアシストする器具や機械を利用したりすることが治療法に挙げられます。

 

必修とは研修医となる上で必要最低限の知識を問うものです。

例:第116回 B2 の問題

異常呼吸あるいは息切れを主訴とする患者の所見と原因の組合せについて正しいのはどれか。

a Coarse crackles ー 喘 息

b 胸部打診で濁音 ー 気胸

c 頸静脈の怒張 ー 右心不全

d SpO2 95 %(room air) ー  呼吸不全

e Cheyne-Stokes呼吸 ー 上気道閉塞

国試はすべて筆記試験であり、実技試験などはありません。

しかし、医学部卒業時点で身につけているべき基本的な診察の知識や技術を

テストする試験は国試前に受験しています。

ですからその知識の確認問題が国試の必修問題として出題されることがあります。

 

例題の答えは「C」です。

Coarse crackles(コース クラックルス)とは主に肺炎で聴取されます。

喘息の時に聞こえるヒューヒューという特徴的な音はWheeze(ウィーズ)と言います。

気胸とは胸の中にある肺に穴が空いたことで肺内の空気が胸の中に流入してしまった状態のことです。

この時胸をトントンと叩くと空のペットボトルのように甲高い音が聞こえます。これを鼓音と言います。

濁音に聞こえるのは水の入ったペットボトルのように胸の中に液体が溜まってしまった場合などです。

心不全とは右と左に2つずつある心臓の部屋(心室と心房)のうち、

右側がうまく働かなくなった状態のことを言います。心臓は血液を送るポンプの働きをしています。

心臓の右側は静脈を通って全身から血液が戻ってくる場所であり、その血液を肺に送る役割も持っています。

つまり右心不全になると心臓に還れない血液が静脈で渋滞します(うっ滞と言います)。

これにより様々な変化が見られ、その一つが首の静脈がパンパンになる頸静脈怒張と呼ばれる所見です。

呼吸不全とは「室内気吸入時のPaO2が60mmHg以下となる状態のこと」と定義されています。

PaO2とは動脈血の酸素分圧のことです。物理で習う分圧と全く同じです。「a」は動脈血という意味です。

これが60mmHg以下というのは簡単にいうならば血液中の酸素が足りていないということです。

一方、SpO2とは経皮的動脈血酸素飽和度といいます。

PaO2とSpO2はどちらも酸素が十分に足りているかを知るために用いられます。

SpO2は皆さんご存知のパルスオキシメータを装着するだけで測定することができる点で、

採血しなければ得られないPaO2よりも優れています。

しかしPaO2は直接血液中の酸素を測っているため、正確な値が必要な場合にはPaO2が必要となります。

Cheyne-Stokes呼吸(チェーンストークス呼吸)とは、

徐々に呼吸が大きくなった後、徐々に小さい呼吸になっていくのを繰り返すような呼吸のことを言います。

心不全脳出血の患者さんや、死期が迫っている人などで見ることがあります。

 

総論とは疾患をまたいで横断的に問うものです。

例:第116回 C3 の問題

医療施設における感染制御チームが行わないのはどれか。

a 職員の感染防止

b 定期的な院内の巡回

c 輸入感染症患者の検疫

d 適正な微生物検査の推進

e 院内感染発生に関するサーベイランス

医療法により、病床を有する医療機関には院内感染を防ぐための委員会を設置することが義務付けられています。

この委員会を一般的に感染制御委員会と言い、その下に結成されるチームを感染制御チームと呼び、院内感染対策の実施などを行います。

病院にはご高齢の患者や免疫を抑える治療を受けている患者など、

健康な人よりも感染症に対して脆弱な人が大勢入院しているわけですから、

一度感染症が広まってしまうと取り返しのつかない大惨事になりかねません。

 

この例題の正解は「C」です。

医療機関に設けられた感染制御チームが空港や海港などで行われる検疫に関与することはまずあり得ないですよね…

国試にはこのように医療に詳しくなくても解ける問題が時々出題されます。

 

 

各論・必修・総論という分け方については以上になりますが、

これらはその問題構造によって一般問題と臨床問題に二分されます。

 

一般問題とは特定のテーマがあり、それに関する問題が出題されます。

これまでにあげた3つの例題はすべてこの一般問題に該当します。

 

臨床問題とはある患者さんについての症状や既往歴、検査所見などの情報が提示され、

それにちなんだ問題が出題されます。

例:第116回 A19 の問題

62歳の女性。息切れと全身倦怠感を主訴に来院した。7日前に発作性心房細動に対してカテーテルアブレーションが施行されており、3日前に退院していた。退院翌日に息切れと全身倦怠感が出現し、症状が徐々に増悪するため受診した。意識は清明。体温 36.2 ℃。脈拍 112/分、整。血圧 88/72 mmHg。血圧は吸気時に収縮期血圧が18 mmHg 低下する。呼吸数 18/分。SpO2 95 %room air。呼吸音に異常を認めない。心音は微弱だが雑音は聴取しない。頸静脈は怒張している。血液所見:赤血球 462 万、Hb 13.2 g/dL、Ht 39 %、白血球 9,700、血小板 39 万。血液生化学所見:尿素窒素 44 mg/dL、クレアチニン 1.7 mg/dL、Na 141 mEq/L、K4.2 mEq/L、Cl 110 mEq/L。 最も考えられる病態はどれか。

a 後腹膜血腫

心室中隔孔

c 肺血栓塞栓症

心タンポナーデ

e 完全房室ブロック

この問題は文章のみで構成されていますが、

レントゲンやCTの画像を参考にして解答するものや、

与えられたデータをもとに計算することを求めるものもあります。

 

なお、この例題の答えは「D」でした。

心タンポナーデとは心臓の周りにあるちょっとした空間(心膜腔あるいは心嚢腔)に

液体が貯留してしまうことで心臓の拡張が妨げられてしまうことで起こる病態のことです。

心臓は血液のポンプですから血液を取り込むことと送り出すことの両立ができてはじめてその機能を果たすことができます。

しかし、心タンポナーデでは心臓の周りに溜まっている液体の存在によって

うまく心臓が膨らめないので血液の取り込みが不十分となってしまいます。

ポンプ内に血液がないのであれば全身に血液を送ることはできませんよね?

そうなってしまうとショック状態に陥り最悪の場合命を落としてしまいます。

心タンポナーデの患者さんでは、血圧の低下、頻脈、奇脈、心音減弱、頸静脈怒張といった所見が見られます。

奇脈とは問題文にもあるように「吸気時に呼気時よりも収縮期血圧が10mmHg以上低下するもの」のことであり、

国試的には心タンポナーデの枕詞のようなものです。

国試のテクニックとして「疾患と一対一で対応するキーワードを覚えること」というのがあり、

これがまさにその一例です。

奇脈に気づけたら、そのほかの所見が心タンポナーデに矛盾しないかを確かめ、

矛盾しないのであれば心タンポナーデと断定して解答に移ります。

本症例(=問題文に登場した患者さんの場合)では、カテーテルアブレーションという

心臓の内側から行う治療の際に不幸にも心臓を傷つけてしまい、

そこから心膜腔に液体(血液など)が溜まってしまった結果、

心タンポナーデを発症してしまったという経緯でした。

カテーテル治療の発達によりこれまでできなかった多くのことが可能になり、

治療の幅が広がりより多くの患者さんを救うことができるようになっています。

しかし、どんなに優れた治療でも副作用や合併症などのリスク・デメリットは必ずあるということを忘れてはいけない、

ということを受験生に伝えたかったのではないかと勝手に感じております。

 

問題数

問題数は概要で示した通り、

1日目でA(各論)75問+B(必修)50問+C(総論)75問 =200問あり、

2日目でD(各論)75問+E(必修)50問+F(総論)75問 =200問あり、

2日間で合わせて400問出題されます。

 

試験時間

試験時間はセクションごとに異なり、各論(A、D)は165分、

必修(B、E)は95分、総論(C、F)は150分であり、

2日間で合計13時間40分となっています。

タイムテーブルとしては休憩を挟みながら朝9時半〜夕方6時半といったところです。

 

合格基準①

3つある合格基準のうちの1つが「必修問題で80%以上の得点」です。

必修問題とは研修医になるための必要最低限の知識を問うものであるため、

採点対象となった必修問題の満点の80%以上の得点を取ることが

すべての受験生に課せられます。

 

必修問題は全部で100問だから80点以上で良いのではと思われるかもしれません。

しかし、必修問題には配点が1点のものと3点のものとがあります。

加えて、試験後の問題の誤りの発覚や異議申し立てなどにより、

公式の答えが変更されること、

問題自体が取り下げられて採点対象から外されること、

正解者には得点として認め不正解者には採点対象から除かれることなどがあります。

 

これらの処置が施される原因としては

出題者の出題の意図が分かりにくいために正答にたどり着けないこと、

考え方によっては複数の解答パターンがありどれも間違っていないこと、

必修問題のレベルよりも難しい内容であること、などがあります。

 

こうしたことから必修問題の満点が決定されるのは試験が終了した後のこととなるので

何点以上で合格!とは事前には定められないのです。

 

合格基準②

2つ目の合格基準が「必修以外で例年70%前後の得点」です。

必修以外の問題、すなわち各論と総論の問題で

合わせて70%前後以上の得点を取らなければなりません。

 

必修と異なる点は、この合格基準が”相対基準”であることにあります。

実は国試の合格者数は厚生労働省によって受験者数の約90%に

コントロールされています。

合格率を90%にしようとした時、

各論&総論のボーダーラインは例年70%前後となるということでしょう。

 

つまり、各論と総論の問題では受験者の70%以上が正解するような

比較的簡単な問題をいかに落とさないかが重要なのです。

大学入試では他の人が解けない問題で得点する力が求められましたが、

国試では多くの人が解ける問題で確実に得点する力が必要とされます。

 

合格基準③

そして最後となる3つ目の合格基準が「禁忌肢3問以下(年度による)」です。

国試は各設問に通常5つの選択肢が与えられます。

問題によっては絶対に選んではいけない選択肢が存在します。これが「禁忌肢」です。

 

禁忌肢の一例を紹介します。

病気によっては投与しては絶対にいけない薬剤というのがあり、

適切な治療薬を選ぶ問題の選択肢としてこの薬剤が書かれていた場合、

これが禁忌肢に該当します。

 

禁忌肢となる理由は様々ですが、多くは患者さんの命に関わる内容となっています。

病気によって命を落としてしまうのは仕方がない面もありますが、

人為的なミスにより患者さんを死に至らしめてしまうのはあってはならないことです。

その重大性から禁忌肢を一定数以上選んでしまうとそれだけで不合格となります。

 

合格条件

国試に合格するには合格基準①、②、③のすべてを満たすことが必要です。

 

 

国試に合格するには?

国試がどんな試験であるか何となくわかったところで、

国試に合格するためには一体どうすればよいのかについて少しお話しします。

(まだ合格してないだろうお前!と思われるかもしませんが、そこは目を瞑っていただきたいです…)

 

どのくらいの勉強時間が必要?

勉強時間に関してもそうですが、受験勉強に正解はありません。全て結果論です。

そのため、ここからは私の実体験や同期から聞いた話をもとに書いています。

 

私のこの記事を書いている頃の勉強時間は平均2、3時間ほどです。

おそらく同期の中では少ない方に含まれると思います。

私はコツコツ勉強するタイプで試験直前期に詰め込むのは苦手です。

同期よりも1年以上早く国試のための勉強を始めたので、

過去問問題集はどの分野も3周はしています。

覚えた知識が抜けないための勉強を中心に今は行っているので、

直前期にしては短い勉強時間となっていますが、

トータルの勉強時間では受験生の平均をゆうに越している自信があります。

 

勉強時間の多い人では1日の食事や入浴などを除いたほとんどの時間を勉強に充てています。

卒業試験に合格した後、しばらくは卒業旅行に行くなど遊び倒し、

卒試数ヶ月前なるとそろそろヤバいなと思って勉強に全力を尽くす人によく見られるタイプの勉強時間だと思います。

 

何度も言うのでくどいかもしれませんが、国試はみんなが解ける問題を確実に解く力が必要です。

つまり、みんながやっているように勉強していれば基本的には大丈夫なのです。

だから、複数人で集まって毎日計画的に勉強する人が一般的だと思いますから、

朝の9時とか10時とかから開始して、夕方お腹が空いたらみんなでご飯に行って、

その後は流れで解散という形が多いのではないでしょうか?

 

どんな勉強をしているのか?

医学の勉強について説明するのは難しいのでここでは割愛させてください…

 

勉強の流れはこれといって特別なものはなく、

「知識を学ぶ→問題を解いて理解度・定着度を確認→復習→演習→復習→演習→…」

という反復中心の勉強になります。

 

勉強に使う主な教材は国試の過去問問題集です。

毎年新たに問題が作成されており、出題される疾患や病態などは毎回異なります。

日進月歩の医療の進歩も反映されており、今と昔では答えが変わっているものもあり、

最新の知見やトレンドにまでアンテナを張っておく必要はあります。

しかし、疾患の概念や治療法、検査法などに大きな変化は基本的にはないので、

これくらいやっておけば大丈夫!という大まかなラインが存在します。

直近5年分くらいの過去問を完璧に仕上げていればまず落ちることはありません。

何も考えずに過去問を解いていただけで合格したという人は意外に多いのです。

 

過去問問題集には問題とその周辺知識までのことしか書かれていません。

そのため、教科書的存在も必要になってきます。

学生がよく使用しているのが「病気がみえるシリーズ」「year note」です。

「病気がみえる」は通称「ガミエル」と呼ばれ、わかりやすい図説で学生から人気です。

一方、「year note」は辞書のようなもので、「ガミエル」よりも詳しく書かれていることが多く、

私はyear noteを愛用しています。

著作権とかにうるさい世の中ですので、気になる方はご自身で調べてみてください。

 

そして忘れてはいけないのが「映像講義」です。

自分だけではなかなか理解しにくい内容をわかりやすく解説してくれると、

近年学生の中で流行りでありもはや主流となりつつある映像講義。

国試合格に必要な情報をすべて予備校側が揃えてくれているので

これを利用すれば勉強の効率は格段に上がることでしょう。

しかーし、映像講義をはじめ、予備校の商品はどれもイイお値段なのです!!

 

私は金銭的な問題もあって映像講義は受けていませんが、

もしこの記事を読んでくださっている医学生で購入を迷っている人がいましたら、

購入することを私はお薦めします。

なぜなら「みんながやっていることをやるのが一番だから」です。

 

国試を突破するために必要な力

国試に合格するために必要な力とは一体何なのか?

 

「暗記力」や「記憶力」と答える受験生は多いのではないでしょうか?

なぜなら国試の出題範囲は広く、必要な知識量は膨大だからです。

国試の問題は知っているか知らないかで得点率が大きく変わります。

国試は5択問題ですから誰だって”5分の1”の確率で得点することができます。

しかし、必修では80%以上、各論・総論では約70%以上の得点が必須ですから、

5分の1の得点率で70〜80%以上の得点は至難の業です。

知識がなければ5分の1程度の確率しか期待できない難問に感じますが、

知識があればそれだけで得点することができるので易しいとさえ感じるでしょう。

もちろん知識があっても解けない問題も中にはありますがね…

 

「気合」「根性」「忍耐力」「底力」といった、スポ根魂のような「精神力」だと答える人も少なくないのではないでしょうか?

勉強してもなかなか模試の成績が上がらない、何度やっても覚えられない、など

受験生が自信を喪失してしまう要因は多々あります。

一日10時間近い勉強を何日間も続けなければならないことや、

終わりの見えない試験勉強、試験に落ちてしまうのではないかという不安、など

試験期は非常にストレスフルです。

これらを乗り越えるための強靭なメンタルも備えている必要がありそうです。

ただ、厳しい大学入試(個人的に国試よりも大変な試練)を乗り越えてきたのですから、みんな大丈夫だと信じています!

 

さて、私が、国試合格に必要なものを1つ挙げるとするのならば、

「自身の特性に応じた勉強方法を見つけてそれを継続する力」でしょうか?

 

国試攻略のための共通解はありませんが、受験生一人ひとりに最適解はあるはずです。

学生歴の長い医学生ならば自分がどんな受験生であるか既にわかっているはず。

それを見出せた者が先へと進み、見出せなかった者が取り残されるのです。

その証拠に、1度国試に落ちた人は再び受験に失敗する可能性が高いことがわかっています。

 

合格率90%

合格率が約90%にコントロールされている国試。

数字だけを見れば簡単に思えるのですが、見かけほど甘くはありません。

国試のための試験勉強も大変ですが医学部を卒業するのも大変です。

国試の準備は医学部での実習や試験、マッチング活動(医学生版就活)と同時並行ですから

その厳しさは大変の二乗以上といったところでしょうか?笑

 

この記事を投稿する頃には国試まで残り50日を切っていることでしょう。

第117回を受験される皆さん、一緒に頑張りましょう!

来年以降に受験される皆さん、1年先で皆さんをお待ちしています!

既に合格された先輩方、応援してください、そして温かく迎え入れてください!

受験生ではない皆さんも是非応援してください!

ここまで読んでくださった全ての方、ありがとうございました!

これからも当ブログをよろしくお願いいたします。

#16 医学部に向いてる人・向いていない人

Aptitude

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

直近の数記事では時事ネタを連投しており、

医学部に関する記事をしばらく投稿しておりませんでした。

FIFAワールドカップをはじめとした興味深いことが続いたため、

それについて書きたいと思わずにはいられなかったためです。

そこで今回は原点回帰、医学部ネタを書きたいと思います!

 

 

今回のテーマ

私はスミシー・医・ハーサカというアカウントで

Twitterにてブログを投稿するなどの活動を細々とおこなっています。

いいねやフォローなどしていただけますと大変励みになります!

twitter.com

 

さて、Twitter上では、現役医学生や医学部を目指している学生など、

多くの人が医学部にまつわる話で毎日盛り上がっており、

私も彼らのツイートに楽しませてもらっています。

 

その中で、

「医学部に行きたい!」「医学部に来れてよかった!」

というポジティブなツイートを見かけることもあれば、

「医学部受験しんどい…」「どうして医学部に来ちゃったんだろう?」

というネガティブなものを見かけることもあります。

 

そこで、どんな人が医学部に向いていて、向いていないのか、

私なりの考えをお伝えしたいと思い、本記事を書くことにいたしました。

完全なる私見であることはご容赦いただき、

もし何かございましたら気軽にコメント等していただければと思います。

 

医学部に向いていない人

まずは「医学部に向いていない人」から話していこうと思います。

 

何となく医師になりたい人

日本で医師になろうと思ったら

医学部を卒業して医師国家試験の受験資格を得る必要があります。

よって、医師になりたいという気持ちが少しでもあるのであれば、

誰しも一度は医学部への進学を検討することになると思います。

 

ここで、医学部へ行こうか迷っている方に

言っておきたいこと、言っておかなければならないことがあります。

 

それは、生半可な覚悟で医学部には来てはいけないということです。

 

医学部は最も過酷な受験となる学部とされることが多いですが、

医学生として6年間やっていくことの方がハードだという意見も多いです。

 

その理由は数ありますが、

いかなる原因で苦しむことになっても、

最後に自分の支えとなるのが医師になりたいという思いです。

この意志が弱ければ入学した先に待ち受ける試練を乗り越えられず、

道半ばで医師になることを諦めざるを得なくなってしまいがちです。

 

また、ただ単に医師の道を断念することになるのはまだマシな方です。

場合が場合ならば、得るもの少なく失うものがとても大きくなります。

お金はもちろん、若さや何かを成し遂げるための時間、

心と体の健康、自分自身に対する自信などなど…

このような目に遭うのならば

いっそ初めから医師を目指さない方が良かったと

後悔している人を何人も見てきました。

 

「医師ってなんかカッコいいじゃん?」

「収入も悪くないし、食いっぱぐれなさそう。」

「医学部に行ける成績あるし医学部進学目指そう!」

 

(言葉は悪いですが)

こんな甘ったれた気持ちで医学部を目指すべきではありません。

この時の安易な選択を悔やむことになる前に一度自問してください。

 

「あなたのやりたいことは本当に医師でなければできないことですか?」

 

大事なことなのでもう一度言います、

生半可な覚悟で医学部には来てはいけない

 

 

真面目すぎる人

先ほどいった通り、医学部での生活は予想以上にハードです。

医学部で生き残るためには高いストレスコーピング力が求められます

 

ストレスを過度に溜めすぎないために必要なスキルの一つに

頑張りすぎないことを私は挙げたいと思います。

 

努力し続けられることは優れた才能であり誇るべきことです。

しかし、時には頑張らないこともまた大切なことなのです

 

学生の本分は勉強ですから勉学に努めることは決して悪いことではありません。

ですが、例えば試験勉強では、

どんなに勉強を頑張ったところで得られる結果は満点合格止まりでしょう。

なかなか成し遂げることのできない偉業ではあるのでしょうが

扱いとしてはただの合格に過ぎず得られるものは単位くらいのものです。

勉強が好きで好きでしょうがいないのであればまあ良いかもしれませんが、

試験に受かるために一生懸命勉強していたのであれば、

大して勉強もしていないのにあっさり合格した同期のことを

快く思えるでしょうか?

私はできた人間ではないので少々根にもってしまうかもしれません。

 

実習でも似たようなことが言えます。

可能な限り毎日参加することとされているはずの実習を

平気でサボるやつが出てきます。

自分だって他にやりたいことやらないといけないことはあるけれど

実習には出ないといけないから我慢しているのに、

目の前でそんなことをされてはたまったもんではありません。

じゃあ一緒にサボればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、

自分がサボった時に限って不幸な目に遭うような気がして

結局サボることはできないのです。

それなのに普段からサボるやつはなぜかうまいことサボるんです。

 

「自分は頑張っているのにどうしてみんなは…」という

初めはささいな感情も、6年という長い年月の間に蓄積されることで

看過することのできないストレスへと変貌してくのです。

そうして身も心もすり減っていくのです。

 

だから、何事にも全力で取り組むのではなく、

頑張るべきことと手を抜いてもいいことの線引きをして

メリハリをつけられないと元気にやっていけないと思います。

これができない不器用さんは医学部どころか現代社会でも苦労しそうです。

 

※ちなみに手を抜くこととサボることは別物ですからね

 

 

閉鎖的で狭い人間関係に耐えられない人

医師になってからもそうですが、医学部の世界はとても閉じられています。

 

一部を除いて、医学部は他の学部とは離れた場所にキャンパスがあります。

そのため、外界と交流する機会が物理的にも少なくなっています。

 

1学年約120人、全学年合わせても約700人ほどの小さなコミュニティに

6年間通わなければならないのです。

関わりたくない先輩・同期・後輩に嫌でも顔を合わせなければならないこと、

ニュースや噂は瞬く間に広がってしまうこと、などなど…

ただでさえ人付き合いの苦手な人にとっては大変生きづらい環境です。

 

あらゆる関係を絶って一人たくましく生きていば良いじゃないか!

そう思われる方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、ここがまた医学部の残酷なところでして、

情報網の確保の重要性みんながやってることこそ王道というのがあります。

 

医学部における試験や実習、マッチング活動で失敗しないためには

周囲から得られる情報が必要不可欠なのです。

また、国家試験をはじめとして、医学部では選ばれた人のみが…ということは少なく、

必要最低限のことさえやっていれば医師免許獲得まで大半の人がこじつけられます。

つまり、何をいつどの様にすれば良いのかわからなくても、

みんながやっていることをみんなと同じ時、同じ様にやっていればいいのです。

 

よほど独り身スキルが高くない限り、医学部サバイバルでは生き残れません。

 

 

医学部に向いている人

では医学部に向いているのはどんな人なのかと言いますと、

「『絶対に医師になりたいんだ!』という強い意志を持ち、

メリハリの付け方が上手な、対人スキルの高い人」

ということになります。

 

要するに、医学生としての生活を送る上で付き纏うあらゆるストレスに

うまく対処することのできる人が医学部に向いているという訳です。

 

「医学部の勉強は知識量が膨大で、

勉強や暗記の量に耐えられない人は医学部に向いていない。」

などとおっしゃられている方もいます。

ですが別に医学部でなくても、

何かを大きなことを成し遂げたいのであれば、

医学部と同等あるいはそれ以上の熱量と努力が必要になると私は考えます。

はっきり言いますが、それだけの熱量もなく努力もできないような人間は

どこで何をやってもうまくいかないでしょう。

 

ですから、医学部での勉強云々よりも、

医学部という特殊な環境の中でうまくやっていけるだけの素質、

そして医師になるという断固たる決意が必要なんだ!!

週刊少年ジャンプ 井上雄彦 作『SLAM DUNK』」の安西先生のセリフより

 

 

医学部に向いている人≠医師に向いている人

医学部への適性について語ってきましたが、ここで残念なお知らせです。

 

医学部に向いているからといって医師に向いているとは限らないのです。

 

その一つの理由として、

「医師は職業であり負うべき責任の大きさが桁違い」

ということが挙げられるかと思います。

 

他人の命を預かる仕事なのですからそれに相応しいだけの

知識や技術、実績そして人柄を備えておかなければなりません。

ですが、ここからの道はやる気に満ちているだけでは先には進めません。

地頭の良さだったり手先の器用さだったり

身体のタフさであったり誰からも好かれるような性格だったり、

選んだ道ごとに求められることが異なってくるはずです。

 

いい加減な医師で良いのであれば医師免許を手にした瞬間にそれは叶うのですが、

自分の中にある理想の医師像に近づこうとして研鑽を積んでいるうちに、

理想と現実とのギャップに耐えられなくなってしまう人も少なくないと聞きます。

せっかく医師になれたのにと思ってしまうかもしれませんが、

医師としての自分のあるべき姿を目指すというのも

やはりそれだけの厳しさというのがあるかもしれないですね。

 

 

最後に

この記事だけを見ると医師を目指すのをやめたくなってしまうかもしれません。

しかし、医師とはなくてはならない職業です。

それに私にとっては絶対に諦めることのできない目標でもあります。

 

人生を賭してまで叶えたい夢を抱くことができた自分は幸せ者

私はそう感じています。 

 

このブログをご覧のみなさんにも、大切な何かが見つかることを心より祈っています。

#15 前立腺肥大症って何ですか?

Benign Prostatic Hyperplasia

 

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

今回は前立腺肥大症についてお話しさせていただこうと思います。

 

 

前立腺ってどんな臓器?

皆さん前立腺という臓器をご存知でしょうか?

 

前立腺とは、(生物学的な)男性のみが持ち、生殖器の一つに数えられる臓器です。

尿を貯める臓器である膀胱の真下に存在し、栗やクルミくらいの大きさがあります。

前立腺の役割はまだ完全には明らかにされてはいませんが、

精液の液体成分を分泌するというはたらきがあります。

精液には子どもをつくるために欠かせない精子が含まれますが、

この精子にとって重要なものが液体成分にたくさん含まれています。

また、前立腺には尿の通り道である尿道と精液の通り道が合流する地点があり、

排尿および射精に関してとても大事な部位になります。

 

 

前立腺肥大症ってどんな病気?

さて、どうして今回前立腺をテーマに選んだかと言いますと、

先日より天皇陛下前立腺の検査をお受けになったというニュースがあったからです。

前立腺の肥大が指摘され、自覚症状はないものの、

入院して生検と呼ばれる検査をお受けになられたとのことでした。

前立腺肥大症あるいは前立腺癌を心配してのことだったと推測されます。

 

皆さん一度くらいは「前立腺肥大症」を聞いたことがあるのではないでしょうか。

では、前立腺肥大症とは一体どんな病気なのでしょうか?

 

ざっくり説明しますと、

前立腺を構成する細胞が多くなりすぎたために、

尿にまつわる症状を引き起こしてしまう病気」です。

 

先ほど前立腺の紹介をしたときに、

前立腺は膀胱の真下にあることと、前立腺の中には尿道が通っていることに

少し触れたと思います。

尿は腎臓で生成された後、尿管と呼ばれる管を下った先の膀胱に一旦蓄えられます。

そして、膀胱で貯めた尿は尿道を通って体外へと排出されます。

前立腺肥大症では、細胞の数が通常よりも多くなってしまうことにより、

前立腺のサイズも大きくなってしまいます。

そうすると前立腺の中を通っている尿道は増えた細胞により押し潰されてしまい、

尿の通り道は細くなってしまいます。

その結果、尿に勢いがなくなったり尿が途切れ途切れになったりして、

ついには尿が出なくなる尿閉と呼ばれる状態にまで至ってしまうこともあります。

尿が膀胱に残ったままになるのでスッキリしませんし、

トイレが近くなるので夜何度も起きなければいけなくもなります。

こうなってくると生活に支障をきたしてしまいとても困ります。

 

前立腺肥大症の治療には大きく分けて薬物療法手術療法の2つの方法がありますが、

まず薬物療法から行うのが一般的です。

 

薬物療法で使用される主な薬には2種類あります。

1つ目が「α1受容体拮抗薬」と呼ばれる薬剤です。

尿の通り道に蓋がされていないと私たちは常にお漏らし状態になりますよね?

そうならないように私たちの体は無意識的に平滑筋と呼ばれる筋肉を収縮させることで

尿道を締(し)めて尿が漏れ出ないようにしてくれています。

この機能に関わっているのがα1受容体であり、前立腺や膀胱に分布しています。

前立腺や膀胱の周りにある平滑筋を収縮させることで尿漏れを防いでいます。

前立腺肥大症では前立腺が大きくなったことでより尿の通り道が狭められています。

α1受容体拮抗薬を使用する目的は、

この尿道を締めるはたらきを抑制することで尿を出やすくすることにあります。

もう1つが「抗アンドロゲン薬」になります。

前立腺の細胞はアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンのはたらきにより増えます。

よって、アンドロゲンのはたらきをブロックしてやることで細胞数を減らし、

前立腺の容積を小さくしてやれば尿の出にくさが改善されると考えられました。

病気の本質に即した治療薬ですが即効性に乏しいのが弱点です。

 

手術療法は、薬物療法の効果が不十分な場合や、

尿閉、尿路感染症などの合併症がある場合に行われることが一般的です。

方法はいくつかありますが、TURP(経尿道前立腺切除術)が標準的です。

TURPではお腹を開ける必要がありません。

尿道から機械を入れて体の内側から前立腺の細胞を削りとっていく手術になります。

あんな小さい穴から機械を入れるの⁉︎と思われるでしょう。

私も実習で初めて見たときには驚きました。

TURPを思いついた人、色々な意味ですごいですね…

 

 

前立腺肥大症と前立腺

前立腺肥大症では、前立腺の細胞が異常に増えてしまう病気だと説明しました。

医学用語では、体内にできた細胞の塊のことを「腫瘍」と呼びます。

正常な細胞は、増えたり減ったりあるいはそのままキープしたりと、

状況に応じてその数を調節されています。

何らかの原因で細胞が増えすぎて塊となったものが腫瘍であります。

腫瘍には”良性”のものと”悪性”のものが存在します。

良性腫瘍は周囲を押しのけるようにして徐々に増えていく腫瘍のことを言います。

前立腺肥大症もこの良性腫瘍に数えられることがあります。

悪性腫瘍の細胞は非常にわがままで勝手な増え方をします。

周囲を押しのけるようにして大きくなっていくだけでなく、

滲み出ていくように広がっては辺りをめちゃくちゃに破壊していきます。

また、血管やリンパ管などを通って別の場所に移動した先で新たに増えていきます。

増加スピードは良性腫瘍よりも速く増え方もとても横暴です。

前立腺にできる悪性腫瘍には前立腺癌があります。

 

前立腺肥大症と前立腺癌は同じ腫瘍というカテゴリーに属しますが、

前者は良性、後者は悪性であり、全く別物です。

前立腺肥大症から前立腺癌になってしまうことはありません。

そのため、前立腺肥大症なのか前立腺癌なのかを正確に見極めることが重要です。

天皇陛下はこのための検査を受けられたということだと思われます。

 

 

気になる方は医療機関の受診を!

気になる症状があっても「痛くないから」「たいして困ってないから」との理由で

病院に行かない人が思いのほか多くいらっしゃいます。

ところが、病気の中にはかなり進行してからでないと

大きな自覚症状が現れないものも少なくありません。

前立腺癌もその一つです。

気づいたときにはもう手遅れなんてことがないように、

些細なことでも医師に相談するよう心がけましょう。

#14 FIFA ワールドカップ カタール 2022開催! -サッカーと医療-

World Cup

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

4年に1度のサッカーの祭典、ワールドカップが始まりましたね!

我らが日本代表はグループリーグ初戦にて格上ドイツから金星をあげ、

決勝トーナメント進出に大きな弾みをつける結果となりました。

 

この歴史的大勝利の立役者となった浅野拓磨選手ですが、

ワールドカップ開幕の数ヶ月前に大怪我を負ったばかりであり、

そんな状態の中代表に選出された彼に対し、

「十分なパフォーマンスを発揮できるのか?」と

多くの人が疑問や不安を抱いていたと思いますし、私もその一人でした。

 

浅野選手は内側側副靱帯と呼ばれる部位を損傷しました。

さて、内側側副靱帯とは身体のどの部位を指すのかご存知でしょうか?

 

正解は…膝関節の内側にある靱帯のことを指します。

 

ちょっと寄り道

 ちなみに、医学用語では内側と書いてないそくと読みます。従って、「内側側副靱帯」は「ないそくそくふくじんたい」と発音します。

 では、なぜ「うちがわ」ではなく「ないそく」と言うのでしょうか?それは、「ないそく」の意味が「うちがわ」とは異なるため、読み方を変えて区別しているのです。同じ理由で外側がいそくそとがわとで区別します

 一般的に、内側(うちがわ)とは、「ある物や仕切りの中のほう」を指します。ところが、内側(ないそく)とは、「正中に近いほう」を指します。正中には真ん中という意味があるように、人体における正中とは身体を右と左に二等分する(仮想の)線あるいは面であり、ちょうど頭のてっぺんとおへそを通ります。

*正中の定義はどこを基準にするかにより異なりますが、ここでの基準は上記の通りとさせていただきます。

 つまり、「気をつけ」の姿勢では、手のひらを太ももにくっつけると思いますが、手のひら側が内側(ないそく)、手の甲側が外側(がいそく)になります。また、「バンザイ」の格好では、腕の親指のある側が内側(ないそく)、小指のある側が外側(がいそく)になります。

 上記の通り、どちらが内側/外側であるかは体位や姿勢によって異なります。それによって混乱を招かないようにするために、解剖学では基準となる体位が存在します。これを解剖学的正位と言い、手のひらを顔と同じ正面に向けた状態で直立した姿勢がこれにあたります。解剖学には、独特な表現方法が内側と外側といった位置関係の他にもたくさんありますので、気になる方はぜひ一度調べてみてください。

 

よって、「内側側副靱帯」とは、膝の中の方にあるのではなく、

右膝なら膝の左側面、左膝なら膝の右側面に位置する靭帯のことを指します。

「靭帯」とは関節を構成している骨同士をつなぐ役割を果たしています。

内側側副靱帯の場合は、膝関節を構成している大腿骨(太ももの骨)と

脛骨(すねの骨)をつないでいます。

 

関節は、曲げ伸ばしなど、腕や脚の目的に応じたさまざまな動きを可能にしています。

関節の動きを自由にすればするほど多彩な動作が可能になりますから、

自身の身体を道具として扱うサッカーのようなスポーツでは

関節の重要度が極めて大切になってくることは言わずもがなでしょう。

しかしながら、関節の可動域を拡げれば拡げるほど、

人体の構造としては非常に脆弱なものとなってしまいます。

関節のダイナミックな動きと構造物としての強度のバランスを

うまく保ってくれているものこそが「靭帯」になります

 

靭帯のキャパシティーの中で関節は自由自在に動くことができますが、

激しいスライディングやタックルを受けたことなどを契機に

関節が限界以上に動いてしまうと靭帯はダメージを負ってしまいます。

靭帯は線維と呼ばれる糸のようなものがいくつか束になったようなものですが、

この線維がどのくらい障害されるかによって靭帯損傷の程度が分類されます。

一部の線維が断裂してしまった場合、軽い腫れと痛みで済むことが多いです。

しかし、断裂した線維が多いと腫れや痛みといった症状は強くなります。

すべての線維が断裂してしまった場合は激しい痛みや腫れに加えて、

関節がより不安定になり、歩行などの日常動作に影響が出ることもあります。

 

靭帯損傷の代表的になものとして、膝の前十字靭帯の損傷や、

足の外側靭帯の損傷(足首の捻挫)がありまして、

内側側副靱帯の損傷もよく見られる靭帯損傷の一つに数えられます。

 

 

スポーツ選手として、実力をフルに発揮することと怪我をしないこととは紙一重です。

得点しようと積極的にプレーすれば身体にかかる負荷もその分大きくなりますし、

他の選手との接触などからくる外力による身体へのストレスも増えていきます。

優れた結果を残すためにはこれらの障壁を乗り越えなければなりませんが

無理をすれば体を壊してしまい、活躍することはおろか、

2度とプレーすることが叶わなくなってしまうケースも残念ながらあります。

 

身体のメンテナンスを徹底して行う自己マネジメント力と、

そして万が一故障してしまってもそこから這い上がることのできる逞しさを

兼ね備えていることがスポーツマンにとって重要な要素であります。

浅野拓磨選手は、これを高いレベルで持っていたからこそ、

ここまでの活躍を成し遂げてこれたのだと、差し出がましいながら私はそう思います。

 

 

コスタリカ戦には負けてしまったものの、

スペインに勝てば日本代表は決勝トーナメントに進むことができます。

引き続き、我らが日本代表を応援していきましょう!

#13 ”フルロナ”が現実味を帯びてきた⁉︎ -自分の健康は自分で守ろう-

Flurona

 

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

日本の秋を彩るもみじの紅葉、皆さんはご覧になりましたか?

辺り一面真っ赤となった景色も素晴らしいですが、

赤色、黄色、緑色、さまざまな色をした葉が織りなす風景もまたをかし。

見る者の心を豊かにしてくれるような気がしました。

 

そんな美しい紅葉のシーズンにもチラホラと終わりが見えてきました。

冬の到来です。

医学生として冬と聞くと思い浮かぶのはインフルエンザです。

 

コロナ禍のここ数年では、インフルエンザの感染者数は激減していました。

マスク着用や手洗い、手指消毒などのコロナ感染対策に努めたことや、

COVID-19の流行そのものがインフルエンザ流行を抑えたこと

(ウイルス干渉と言います)などが理由として考えられているそうです。

結果、インフルエンザワクチンが余るといった事態があちこちで起きていたそうです。

 

ところがどっこい、今シーズンではインフルエンザの流行が危惧され始めています

理由としては、外出や渡航への制限が解除・緩和されたことや、

直近の2年間インフルエンザの流行がなく、

インフルエンザへの免疫力が低下していることなどが考えられています。

現に、海外ではすでにインフルエンザの流行がみられています。

 

ここで気をつけなければならないことが”フルロナ”です。

フルロナとは「インフルエンザとコロナに同時に感染してしまうこと」を指します。

フルロナと呼ばれる新しいウイルスのことを意味しているわけでないのでご安心を。

 

では、フルロナの一体何に気をつけなければいけないのでしょうか?

1点目は、「症状が似ていること」です。

どちらも発熱、倦怠感、頭痛、咳、喉の痛みが主な症状として現れてきます。

そのため、症状だけでこれらを区別することはできません

インフルエンザの方が潜伏期間が短く、症状が現れるまでが早いとされてはいます。

しかし、いつ感染したのかがはっきりとわからない以上は

症状が出現するスピードにより鑑別することは困難です。

よって、そのような症状の患者さんが病院に来た場合、

医師たちはその患者をコロナに感染しているものとして対応せざるを得ません

インフルエンザであれば検査も簡便で治療薬もありますから

患者にとっても病院側にとっても比較的楽だと言えるでしょう。

しかし、コロナに感染しているもしくはその疑いのある場合では、

その患者を隔離したりテレビで見たことのあるような防護服を身にまとったりと

周囲に感染させないために万全な準備を施した上での診察や検査を強いられます。

それにコロナだと判明しても確実な治療法はありません。

インフルエンザだったとしても通常より時間も手間も費用もかかります。

日本では、例年であれば、毎年1000万ほどの人がインフルエンザにかかります。

これらすべての人に対して、コロナ対策をした上での診療をせざるを得ないのならば、

医療現場への負担は計り知れず、いわゆる医療崩壊を招きかねません

 

もう1点は、「フルロナでは死亡率が2.35倍高くなること」です。

イギリスのとある研究チームの報告によると、

コロナのみに感染した時の死亡率との比較において、

インフルエンザとコロナに同時感染した時では

死亡率が2.35倍になったという結果になったそうです。

このほかにも、フルロナの重症化率、死亡率の高さを報告している研究は複数あり、

インフルエンザとコロナへの同時感染に注意しなくてはならないでしょう。

 

それでは、フルロナにならないためにはどうすればいいのでしょうか?

至って答えはシンプルです。

これまで同様、手洗いや手指消毒、マスク着用、こまめな換気といった

基本的な感染対策を徹底し、ワクチンの予防接種を受けることです。

フルロナは確かに怖いですが、必要以上に恐れる必要はありません。

 

オミクロン株に対応したワクチンを接種した人が亡くなるというニュースがあり、

ワクチン接種を躊躇っている方も中にはいらっしゃるとは思います。

ワクチンは100%安全なものでは決してありません。

しかしながら、厳しい審査を通過しその安全性と効果を認められたのも事実です。

コロナワクチンのみならず、インフルエンザワクチンの場合でも、

大きくニュースに取り上げられてこなかっただけで

ワクチン接種後に望まぬ結果となってしまうことはこれまで何度もありました。

目の前にある印象的な情報のみに捉われた判断だけは避けましょう。

ワクチンについてしっかり調べた上で、

「私には、ワクチンはメリットよりもリスクの方が大きい」と

判断したのであれば、ワクチンを打たないのもありだと思います。

 

 

「あなたの健康を守れるのはあなた自身だけなのです」

#12 「糖尿病」の名称変更へ -負のイメージ払拭は可能か?-

Diabetes Mellitus

お久しぶりです、スミシー医ハーサカです。

 

先日、医学生ブロガーとして記事を一本書かざるを得ないニュースが私の耳にも飛び込んできました。

日本糖尿病協会が、「糖尿病」という名称を変更する方針を明らかにしたのです。

というわけで、今回は「糖尿病」に関してお話しさせていただこうと思います。

 

 

名称変更の理由

「糖尿病」という名称がなぜ変更されるのか?

都内で行われた同協会のセミナー内で、清野裕 理事長が明かしたことを紹介します。

 

2021年11月8日から2022年9月30日までの期間で実施された、

患者を対象としたインターネット上でのアンケート調査によると、

1087名の回答者のうち約9割もの人が病名に何らかの抵抗感や不快感を持ち、

約8割が病名の変更を希望したという。

「尿」という言葉には負のイメージがあるとの意見が多かったそうだ。

*参考記事:

「糖尿病」の名称変更へ~患者の9割が不快感—糖尿病協会~|医療ニュース トピックス|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト

 

「糖尿病」ってどんな病気なの?

糖尿病の名称について語っていく前に、

そもそも糖尿病とは一体どんな病気なのかを簡単に説明したいと思います。

 

注意!ここでは2型糖尿病について取り扱います。

 

■糖とインスリン

三大栄養素」をご存知でしょうか?

炭水化物、脂質そしてタンパク質の3つのことをまとめて指す言葉であり、

これらはヒトが活動するためのエネルギー源となる欠かせないものです。

 

これらのうち、炭水化物は「糖質」と「食物繊維」との2つに分けることができます。

これらの違いは人の持つ消化酵素で消化することができるどうかであり、

糖質は消化でき、食物繊維は消化することはできません。

 

今回はこの糖質について扱います。

 

食事により得た糖質は腸から吸収され、

脳や筋肉などの細胞が活動するためのエネルギー源となります。

必要な分だけエネルギー源として消費されるので、

余った糖質は脂肪として体内に蓄えられます

 

さて、脳や筋肉などの細胞が糖質からエネルギーを産生するためには、

まず、細胞に糖質を届ける必要がありますよね?

この糖質の運搬を担うのが血管です。

体中に張り巡らされている血管を通って糖質は全身の細胞へと運ばれていくのです。

 

この際、糖質は血液中に含まれているわけですが、その濃度を「血糖値」と言います。

のちのち登場する単語なのでよく覚えておいてください。

 

ついでに、、、

HbA1c」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、

血液の主成分たる赤血球を構成するヘモグロビン(Hb)に

糖(グルコース)が結合したものを「HbA1c」と言います。

採血した日の過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映すると言われています。

 

次に、細胞まで運んできた糖を細胞の内側に取り込む必要があります。

この工程で重要な役割を果たしているのが「インスリン」と呼ばれるものです。

インスリンとは、膵臓から分泌される物質のことで、

インスリンにより各細胞は糖を血液中から細胞内へと取り込めるようになり、

それによって細胞たちが糖質をエネルギー源として利用できるようになります

 

インスリンの働きの不足により高血糖になる

ここからようやく糖尿病についての説明が始まります。

 

糖尿病という病名から、「尿に糖が出る病気」だと思われるでしょう。

しかし、糖尿病だからといって必ずしも尿から糖が検出されるわけではありません。

反対に、尿に糖が含まれているからといって糖尿病であるとも限りません。

糖尿病において重要なのは、血糖値が高い状態である「高血糖」なのです。

 

高血糖」という状態に体が陥ってしまうことで

非常に多彩な症状が引き起こされてしまうのが糖尿病という病です。

 

どのようにして高血糖になってしまうのか?

大本の原因は、食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレス、加齢、遺伝など多岐に渡り、

これらが複数絡み合った結果糖尿病を発症してしまうと考えられていますが、

インスリンの働きを不足させてしまう2つのメカニズムが

高血糖ひいては糖尿病の発症につながっていると考えられています。

 

*よく誤解されているのですが、

 甘いものばかりたくさん食べているからといって糖尿病になるわけではありません。

 後述しますが、インスリンというホルモンの分泌量の低下と効果の減弱が

 糖尿病の発症に大きく関わっており、

 体質的にインスリンの分泌量が少なく効果の弱い人が

 運動不足なのに食べ過ぎて摂取エネルギー>消費エネルギーとなってしまうと

 糖尿病を発症するリスクが増加してしまうのです。

 

■「インスリン分泌障害」と「インスリン抵抗性亢進」

この2つがインスリンの働きが不足するメカニズムです。

登場する言葉が次第に難しくなってきましたが、

できる限りわかりやすい説明を心がけますのでどうか最後までお付き合いください。

 

インスリン抵抗性亢進」とは、

インスリンの働きを邪魔するものが増えてしまった状態のことを指します。

肥満に伴う内臓脂肪の蓄積や脂肪肝などがその主な原因です

その邪魔な存在により、インスリンの効果が発揮されにくくなっているため、

細胞内に取り込める糖質が減り、血液中の糖質の濃度は高くなってしまいます。

インスリンの効きが悪くなった分を補うため、

より多くのインスリンを分泌する必要が生じてしまいます

 

インスリン分泌障害」とは文字通り、

膵臓からインスリンが分泌されにくくなった状態のことを言います。

この原因の一つに「インスリン抵抗性亢進」があります。

インスリン抵抗性の高い状態が改善されないでいると

膵臓はその間ずっと大量のインスリンを分泌し続けなければなりません。

その結果、膵臓は疲れ切ってしまってインスリンを分泌できなくなってしまいます。

 

また、膵臓癌などの膵臓の病気もインスリンの分泌を低下させる原因となります。

 

高血糖状態が長期間続いてしまうと、

膵臓インスリンを分泌する機能が低下してインスリン抵抗性も増大、

さらなる高血糖を招いてしまうという負の連鎖を引き起こしてしまうのです

 

こうして、高血糖の状態が慢性化してしまった状態を「糖尿病」と言います。

 *慢性化=長引くこと

 

■糖尿病の症状

糖尿病は、軽度であればその多くは無症状であり、

検診や他の病気の受診中に発見されることも多いです。

進行すれば、多飲、多尿、口渇、体重減少、疲れやすいといった症状が現れます。

糖尿病の合併症による症状で糖尿病だと発覚する場合もあります。

 

つまり、糖尿病とは自覚症状に乏しく、気づかないままに進行・悪化し、

気づいた時には合併症のために身体のいたるところに支障をきたしてしまっている

などという状態に陥りかねない、決して侮ることのできない病なのです。

 

■糖尿病の恐ろしさ

エネルギーの源である糖質がたくさんあるのは良いことではないのか⁉︎

何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」なのです。

血糖値の高い状態が長期間続いてしまうと全身の血管が傷んでしまうのです。

これが原因で体に様々な不具合が生じ、時には命に関わるようなことも起こります。

このような不具合のことを合併症と言いますが、糖尿病の恐ろしさはここにあります。

 

糖尿病の三大合併症

糖尿病の合併症には三大合併症と呼ばれるものが存在します。

糖尿病腎症」、「糖尿病網膜症」、そして「糖尿病神経障害」です。

これらは高血糖の状態が慢性化してしまった結果、

細小血管と呼ばれる微小な血管が傷んでしまうことが原因で起こるものです。

 

・糖尿病腎症

人工透析という言葉を耳にしたことはありませんか?

人工透析とは、血管と機械とを繋いだ管を通して体の外に出した血液に対して

不要な物質を取り除いて必要な物質を補給するということを機械が行い、

また管を介して血液を体の中に戻すという医療行為のことです。

 

この人工透析を受けなければならなくなった原因の第一位が糖尿病腎症です。

 

腎臓には重要な機能がいくつか備わっていますが、その中に尿を作る機能があります。

尿には不要になったものを体の外に排泄する役割があるのですが、

不要なものと必要なものは合わせて血液中に含まれています。

腎臓は尿を生成する過程でいらないものといるものを選別しているのです。

捨てたいものは尿に含ませ、残しておきたいものは血液に戻します。

しかし、糖尿病になってしまうと、腎臓はこの役割を果たせなくなります。

つまり、糖尿病の腎臓では廃棄したいものを体内に溜め込んでしまい、

保持したいものを尿として体外に捨ててしまうのです。

このような状態では体がろくなことにならないことは想像に難くないですよね?

 

人工透析器に腎臓の本来の機能を担ってもらわないと

長くは生きられない体になってしまうのが糖尿病腎症です。

 

糖尿病網膜症

「網膜」とは眼球のうち光を感じ取る部分のことです。

つまり、視覚にとってものすごく重要であるということです。

糖尿病網膜症とは、この網膜に酸素や栄養を運んでいる血管がダメになる病気です。

すなわち、糖尿病に罹ると目が見えなくなる可能性があるということです。

成人が失明する原因の第3位であり、

年間約3000人が糖尿病網膜症によって光を失っているのです。

 

糖尿病神経障害

糖尿病神経障害は三大合併症の中で最も頻度が高く、比較的早期に発症します。

この病気では障害される神経によって現れる症状は様々です。

 

感覚神経が障害されてしまったとしましょう。

あなたは痛みや温度を感じにくくなってしまいました。

その結果、足元のストーブに足が当たっているにもかかわらず熱や痛みを感じず、

家人が異変に気づいた時には既に大火傷を負っていた後でした。

なんていうことが実際に起こり得てしまうのです。

痛みとは危険から身を守るためにある物であり、

痛みを感じられないということは時に致命的となるのです。

 

交感神経や副交感神経が含まれる自律神経も障害されます。

これらは血圧コントロールや排尿、排便といったものに深く関わっており、

立ちくらみ(起立性低血圧)、神経因性膀胱、下痢、便秘といった症状を起こします。

あくまでもこれらは一例に過ぎず、

自律神経が冒されると身体のあらゆる機能に支障が生じるため、

それまでの生活は送れなくなるといっていいでしょう。

 

■その他の合併症

糖尿病の合併症の種類はとても多いです。

細小血管が障害されて起こる三大合併症以外にも恐ろしい合併症は山ほどあります。

 

・虚血性心疾患:心筋梗塞狭心症

・脳血管障害:脳梗塞

・末梢動脈疾患:閉塞性動脈硬化

・糖尿病足病変(下肢が感染症に冒されたり血行不良により腐ったりする)

感染症:糖尿病では免疫力が落ち、健康なら罹らない感染症にまで罹るようになる

・眼の病気:糖尿病網膜症だけでなく、緑内障白内障なども合併することがある

うつ病認知症

・悪性腫瘍:肝臓、膵臓、大腸の癌のリスクが上昇する

 

医学部で勉強していると、色々なところに糖尿病が登場するのですが、

これらはそのごく一部です。

糖尿病って尿検査で尿中に糖が検出されるだけの病気でしょ?

そんな風に糖尿病を軽視している方、それは間違いです。

病名に糖が含まれているからといって糖尿病は決して甘く見てはいけません。

 

「糖尿病」という名称の由来

糖尿病について少々語り過ぎてしまいましたが、

糖尿病のことがなんとなくでも理解できたのではないでしょうか?

 

糖尿病という病気の存在は紀元2世紀ごろには既に知られており、

Aretaeus という人物により ”diabetes”と名付けられたそうです。

diabetesとはdia = through, across、betes = pass, goという意味に分解できるように、

糖尿病の患者のたくさん水を飲んでたくさんの尿を出す様が

まるで絶え間なく水の流れる”サイフォン”のようであったためにこう命名されました。

しかし、尿がたくさん出てしまう「尿崩症」という別の疾患と区別できないとのことで

18 世紀に William Cullen が蜂蜜のように甘いという意味を持つ‶mellitus"を付け、

Diabetes Mellitusという言葉が出来上がったといわれています。

 

紀元前の中国では糖尿病のことを”消渇”と呼び、日本でもそう呼ばれていたそうです。

消渇とは「食べ物や飲み物が消える、通過する」という意味があるそうで、

Diabetesの語源と似たものを感じますね。

そして、この頃には病名に”尿”は含まれていなかったこともわかります。

 

西暦1700〜1800年ごろ、

尿がたくさん出てしまう病気として”尿崩”が知られていましたが、

そのうち尿中に糖が含まれるものを”蜜尿證”と呼んで区分していたそうです。

”蜜尿證”はオランダ語で書かれた西洋の医学書に記載されていたDiabetes Mellitusを

緒方洪庵が日本語に訳したものとされています。

のちに蜜尿證は青木浩斎により”蜜尿病”と訳されたと考えられています。

西暦1800年後半より、”糖尿病”という言葉が書籍に現れ始めます。

蜜尿病の診断には尿中の糖分を検出することが重要だと記されていることより、

蜜尿病から糖尿病と呼ばれるようになったと考えるのが妥当でしょう。

 

参考文献:羽賀達也,「日本における病名『糖尿病』の由来について」, 2006

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/49/8/49_8_633/_pdf/-char/ja

 

本記事の冒頭で紹介した日本糖尿病協会が行ったアンケートでは

”尿”という文字には悪いイメージがあると回答していましたが、

現代と比べて医学が全然進歩していない状況下で

「尿中の糖分を調べる」ことの重要性に気づいた先人たちの

知恵と努力の結晶と言えるのではないでしょうか?

 

名称変更で負のイメージは払拭できるのか?

糖尿病に対するネガティブな感情や考えは

”尿”ではなく糖尿病への誤解からくるものであると私は考えます。

そんなことは協会の方々も承知の上だとは思いますが、

それでも名称変更に踏み切るのであれば何らかの期待があるのでしょう。

 

1つ例を紹介しましょう。

原発性胆汁性硬化症(primary biliary chlangitis 略してPBC)という病気があります。

PBCとは難病に指定されている疾患の一つで、病因が未だに解明されていません。

胆汁と呼ばれる脂肪を消化するために必要な液体が正しく分泌されず、

胆汁の通り道(胆道)の中で滞ってしまいます(これを胆汁うっ滞と言います)。

胆汁うっ滞に伴い、胆道の細胞の破壊と線維化が進んでしまい、

最終的には肝硬変、肝不全という状態にまで陥ってしまうのがPBCという病気です。

本疾患の概念が確立された頃には、多くの症例が肝硬変にまで進行してしまった状態で

発見されていたために原発性胆汁性”肝硬変”と呼ばれていました。

肝硬変とは、あらゆる肝臓の病気の終末像であり、肝臓癌に進行することもあります。

現在の医療では治す方法はなく、肝臓の移植以外に根治することはできません。

ところが、診断・治療技術の進歩により肝硬変に至る前に発見することが可能になり、

現在ではほとんどの患者が肝硬変になることはありません。

これを受け、2016年に日本肝臓学会及び日本消化器病学会において

原発性胆汁性”胆管炎”への病名変更が決定されたという経緯があります。

名称変更前には、本疾患では肝硬変にはならないことがほとんどだというのに、

”肝硬変”という言葉が病名に含まれているというだけで

生命保険や住宅ローンに加入できないということが昔はあったそうです。

しかし、原発性胆汁性胆管炎という名前に変わって以来、

そういった誤解は少しずつですが解消されているそうです。

 

糖尿病の場合も、このような効果を狙っているのかもしれません。

とはいえ、誤った認識や知識不足が偏見を助長し差別に繋がっているのだから、

名称よりも糖尿病に対する正しい知識の啓蒙活動を第一に行うべきだと思います。

 

糖尿病を理由に就職や進学といった権利を奪われるようなことがあってはいけません。

確かに、糖尿病の治癒は難しいですし、数多くの合併症のリスクとなり得ます。

しかし、適切な治療を受ければ問題ないレベルまでに抑えることができますし、

健常者と変わらない生活を送ることだって十分可能です。

 

また、糖尿病患者は怠け者であると見られてしまうことも無くさなければなりません。

日々の不摂生が祟って糖尿病を発症してしまうという誤解が普及してしまっています。

ろくに運動せず食べてばかりいると糖尿病の発症リスクは上がるかもしれませんが、

そんな生活を続けていても糖尿病にならない人もいます。

先ほど申し上げた通り、体質や遺伝的なことなど本人にはどうしようもないことなどが

複雑に絡み合った結果、糖尿病は発症すると考えられています。

糖尿病の中には1型糖尿病に分類されるものがあります。

1型糖尿病では若くしてインスリンを全く分泌することができなくなります。

その多くは、細菌やウイルスといった外敵から身を守るはずの免疫機能が

誤って自身の細胞や組織を攻撃してしまう”自己免疫異常”が原因で発症します。

その他に、妊娠することにより糖尿病を発症してしまうこともありますし、

他の病気に対する治療が原因で糖尿病に罹ってしまうことだってあります。

 

日本では、成人の約4人に1人が糖尿病またはその可能性のある予備軍に該当します。

この事実だけからも、糖尿病の正しい知識を学ぶ必要性が理解できると思います。

糖尿病という名称を変えただけで諸々の問題が解決するとは考えにくいですが、

このことが、多くの人々が糖尿病について知るきっかけとなるのであれば

病名変更も意味のある行動になるのかもしれませんね。

 

最後に

ただ気づけていないだけで人は誰しも何かしらの事情を抱えているものです。

無知であるが故に知らず知らずのうちに彼らを傷つけてしまっているかもしれません。

彼らのためになる言動と彼らに対する偏見や差別とは、実は紙一重なのです。

良かれと思ってしたこと彼らのことを想って言ったことが、

彼らにとっては望まないことだったなんてことはしばしばあります。

すべての人に対して完璧に対応することは到底不可能なことではあります。

しかし、思慮の結果失敗してしまうのと、思慮なしに失敗してしまうのでは

失敗に対する相手の受け取り方や事の顛末はまったく異なるものになるでしょう。

「正しい理解に努めること」がお互いにとって居心地の良い環境をもたらすのです。

 

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#11 人生における勝者とは? -医学生って”勝ち組”なのか-

The winners in life

こんにちは、スミシー医ハーサカです。

 

新たなことに挑戦!ということで始めたブログ活動ですが、

Twitterやnoteでもアカウントを作って記事の投稿宣伝を行う様になり、

”ブロガー”として半人前くらいにはなれたでしょうか?笑

 

世の中には様々なジャンルでブログ活動をなさっている”先輩方”が

ごまんといらっしゃいますが、そういった方々の中に私のブログを

見てくださっている方がおられると最近気づきました。嬉しい限りです!

また、ブロガーでもなく医学生でもない方々にもお越しいただいています。感謝です!

 

というわけで、今回は、トピックは医学部のままで、

医学生ではない方にも読んでいただけるような内容でお届けしたいと思います。

 

それでは参ります!

 

 

・医学部を目指すということ

過去の記事を読んでくださっている方はご存知かもしれませんが、

私は祖父の病気を理由に医師を志す様になりました。

私が保育園〜小学生低学年の頃より、病気に苦しむ祖父の姿を見てきました。

幼心ながらお医者さんになって祖父の病気を治してあげたいと思いました。

 

それからごくごく普通の学生生活を送り、

将来の進路について本格的に考えなければならない時期がやってきました。

それまで親の言う通りに進んできた人生でした(別に不満はありませんでした)が、

「医学部を受験する」とあっさり決めてしまいました。

私の中ではこれしか考えられなかったという感じでした

医学生となって数年後、「あんたは誘導されたんやで」と親に言われました。

私の人生、主体性なくないですか?何も自己決定してないやん笑)。

 

受験勉強は大変でした。

前提条件として、通学に片道8km、自転車で30分ほどかかります。

また、運動部に所属していたので毎日19時以降の下校となりました。

帰宅時すでに20時近く、夕食や入浴を済ませると、早くても21時です。

そこから授業の予習復習を行います。

それが終わってからようやく入試対策のための勉強を始めます。

これらすべてを終えた時には夜の2時は越えています。

学区が広いこともあってかどの部活も基本的に朝練はないので、

8時半くらいから始まるホームルームに遅刻しないよう家を出ます。

そのため、7時くらいには起床しなければなりません。

つまり平日の睡眠時間はだいたい4〜5時間です。

この生活を高校3年生の夏に部活動を引退するまで続けます。

 

引退後は17〜18時くらいには帰宅できるので、

就寝までの、夕食と入浴を除いたすべて時間を勉強に費やします。

部活動のために体力を回復させる必要がなくなったので

朝の3〜4時くらいまで勉強しても平気でした。

 

当然、授業中は居眠りをしま…せん!私は自他共に認める真面目人間です。

提出物はすべて期限までに出し、体調不良以外の理由で学校を休みません。

そういったところが認められ、何度も学級委員長を務めました。

小学校から高校まで成績がオール5だったのは私の努力の結晶です!(褒めて褒めて)

部活動だってそうです。こうした努力の甲斐あって、

部活動では3年間レギュラーとして出場したりキャプテンを任されたりしました。

 

自慢はこのくらいにしておいて、

これほどのバイタリティがあっても受験期はとてもしんどいものでした。

大学入試とは何が出題されるのか、教科と出題範囲以外に何もわかりません。

さらに医学部受験には、センター試験(今は共通テストですか?)で

最低でも9割取らないといけないとか(※二次試験だけの大学もあります)、

みんなが正解できる問題を取りこぼしてはいけないとか…

難しい問題を解ける学力の高さに加え、

どんな問題が来ても大丈夫という完成度の高さも求められます。

というわけで、受験勉強はやり足りないことはあってもやり過ぎることはないのです。

そんな終わりのない戦いに、みなさん耐えられるでしょうか?

 

私の場合は、高校生最後の夏休みは返上して、家族が出かけている中、

一人家で黙々と何時間も勉強していました。

睡眠と食事と入浴以外のすべての時間を勉強に費やしました。

もちろん、ハロウィンもクリスマスもお正月もすべて返上です。勉強するのみです。

(初詣に行き合格祈願したのを忘れていました。嘘つきました、ごめんなさい。)

 

正月過ぎればセンター試験まではあっという間です。

センター試験当日は緊張と寒さからくる手の震えで

問題冊子を包むフィルムを破るのにとても苦労したのを覚えています。

センター試験が終わり、極度の緊張状態から解放されたのも束の間、

センター試験の自己採点で一喜一憂したのちに、

予測される得点で今後がプチ地獄か地獄かが決まります

(天国か地獄ではありません。受験期に天国なんてないです、はい。)。

 

数週間の生き地獄を越え、いよいよ本番の二次試験。

生きるか死ぬかもう一年頑張るかの大勝負!緊張でペンが動きません☆

医学部の場合は筆記試験に加えて面接試験もあります。

口から出るのは志望動機ではなく、心臓でした(バックバクのドッキドキ。)

 

余談ですが、医学部だけ面接試験があるのおかしくないですか?

医学部には変な人たくさんいますよ?

面接で学生の何を見てるのか、今でも疑問です。是非なくしてください。

あ、それだと超ヤバい奴が医学部に来ちゃいますね…

 

すべての試験が終わり、合格発表がなされる前に卒業式を迎えることになります。

これもやめてくれませんかね?笑 

大学に進学できるのか決まっていない状況で、正直、心から卒業を祝えないです。

大学の掲示板に自分の受験番号が載っているのを目にするその瞬間まで

心が休まる瞬間なんてこの小心者にはありませんでした。

 

私の場合、幸運にも医学部に現役合格することができました。

ようやく肩の荷がすべて下りました。

大学生になるまでのひとときは、それはそれは最高でした。

 

しかし、医学部は甘くはなかったのです…

 

 

医学生になるということ

大学生活がスタート!

夢にまで見たキャンパスライフに胸躍らせながら、医学部での6年間を歩み始めます。

高校生までとは違い、色々なことが私たち大学生を待っています。

興味のあることを学ぶことができ、サークル活動にアルバイトもできる様になります。

大学の長い休暇を使ってたくさんのワクワクを経験することもできます。

 

しかし、そんな楽しいことだけではありません。

大学生は一人の大人として扱われます。

自分に関するあらゆることは自分で責任を取らなければいけません。

高校生までは学校の先生や保護者が面倒をすべて見てくれるので、

学生は自分のやりたいことに集中することができました。

しかし、大学生になると種々の手続きやスケジュール管理などは

全部自分一人で行わなければなりません。

いつまでもお子様気分でいると、

履修登録で失敗したり出席必須の講義を忘れていたり、

取り返しのつかない過ちを犯したりしてしまうでしょう。

 

さて、医学部についての話をしましょう。

(もしかしたら他の学部にも当てはまるかもしれませんが、そこはご勘弁。)

医学部では、多くの学生が「留年」の二文字に怯えながら大学生活を過ごしています。

なぜなら、他の学部よりも進級判定が厳しいからです。

一般的に、試験に落ちてしまった場合、再試験を受けることができます。

再試験にも合格できなければ「落単」となってしまいます。

そして、獲得した単位数が各大学の定める基準に満たなければ留年となります。

他の学部であれば、物によっては単位が足りなくてもある一定の学年までは進級でき、

それまでに必要な単位を揃えていればよいとされることが一般的だと思います。

しかし、医学部では学年ごとに取得しとかねばならない単位がいくつもあり、

それらが足りないまま進級することはできないとされおり、

中には一度試験を落としただけで留年となってしまうような恐ろしい大学があるとか。

 

肝が据わっているのか、実家が太く留年を恐れていないのか、

それとも余裕で合格する自信があるのか、

試験が近いにもかかわらず勉強せずに飲み歩いているような学生もいますが、

試験がストレスとなって体調を崩したり精神面で不調をきたしたりしてしまう人も

少なくないというのが実情です。

 

心身が蝕まれるのは試験だけではありません。

だいたい2年生で受講する解剖実習や

4年生あるいは5年生から始まる臨床実習などの実習も中々にストレスフルです。

原因は多岐にわたります。

朝早く遅くまで拘束時間が長いこと。

長時間同じ姿勢を取らされ、会話や飲食もできない状況下に置かれること。

一緒にいたくない人と同じ実習班になってしまうこと。

パワハラモラハラ、時代錯誤も甚だしい老害に、サイコパス

入学当初のカリキュラムに大きな変更がなされ、それに振り回されることもあります。

「あれ?これが俺/私のなりたかった医師なの?」と思ってしまうかもしれません。

 

6年生が近づいてくると初期研修先を決めるためのマッチング活動を開始しますが、

これも結構ストレスものです。

「医学部って就活しなくてもいいんじゃないの?」と思っている人もいるでしょうが、

このマッチング活動はいわば医学生版の就活です。

研修先として考えている病院にアポをとって見学に行きます。

採用するのに相応しい人材かどうかチェックされていないか周囲の目に怯えながら、

研修の内容、お給料、休日の暮らし方などなど知りたい情報を聞き出します。

研修医だけでなく院長や部長といった偉い方との面談が控えていることもあります。

見学が終わればすぐさまお礼のメールを送ります。

これを何度も繰り返します。

採用試験が近くなれば、本命の病院に最後のアピールに行くこともあります。

大学にもよりますが、マッチング活動のための期間は設けてくれないので、

実習の合間を縫ったり実習をサボったりして見学に行かないといけません。

病院によっては事前課題を課してくるところもあり、

実習や迫る卒業試験や国家試験の勉強をしながら、

履歴書・願書とともに事前課題を仕上げなければならず、骨が折れます。

当然、採用試験も病院見学同様、実習や試験の日程と相談しながらになります。

 

医学部では心身が休まる時があまりありません。

常に何かに追われながら、別の何かをこなしていかなければなりません。

万が一、何かに足を引っ張られようものなら、

それが原因でズルズルと落ちるとこまで落ちてしまいます。

 

人の命を救うのはそれほど難しいということなのでしょうか?

医学部を卒業することさえ容易ではありません。

人々の病気や怪我を治したくて医学部に入った自分が心身を損ねてしまうなんて

おかしな話だと思いませんか?

 

 

・医師は”勝ち組”

よく医師は”勝ち組”だと言われます。

経済面から見ると確かにその通りかもしれません。

また、職業を聞かれて医師と答えると明らかに周囲の反応が変わります。

これは医学生にも当てはまります。

大学生ですと答えた時よりもすごいねえ、偉いねえとチヤホヤされやすくなります。

世間様の医師に対するイメージのお陰でしょうか?

それとも過酷な受験を乗り越えたことへの讃美からでしょうか?

いずれにせよ、医学生であることを悪く言われたことは、私はまだありません。

 

しかし、先ほどチラッと話したように、

医師という職業の実情は世間のイメージとは異なることが往々にしてあります。

医学の知識や技術に優れ、なおかつ人徳も備わっているような、

聖人ばかりでは決してありません。

地位や権力、実績の上にふんぞり返っている傲慢な医師もいますし、

自分のことあるいは金やモテることにしか頭に無いような医師もいますし、

他人の気持ちの分からないひとでなしの医師もいますし、

激務に追われてすっかり荒んでしまった医師もいます。

真っ当な医師ほど損をしているのでは?と思ってしまうことがあります。

上司や同僚、他の医療従事者、患者やその家族に恵まれなかったために、

”勝ち組”のイメージとはかけ離れてしまった医師も少なく無いと思います。

「金はあるけど、〇〇はない。」

お金と引き換えに何か大切なものを失いかねないのが

”勝ち組”と呼ばれる医師の正体なのではないでしょうか?

 

 

・それなら医学生はどうなのか?

医師は”勝ち組”ではないかもしれないのであれば、

医師の卵である医学生も”勝ち組”には含まれないのでしょうか?

 

ここでその答えを出してしまうのはとても難しいことなので遠慮したいところです。

 

先ほど話したように医学部の6年間は決して楽なものではありません。

医学部を卒業した先に、明るい未来が待っているとも限りません。

 

とはいえ、医学生の時点で将来を悲観するのは時期尚早だと私は考えます。

少しずつですが世の中は変わりつつあります。

多様な生き方、価値観、考え方が認められるようになってきました。

医師の世界でもそうなることを大いに期待しています。

 

医学部に入り、医療界の知りたいことも知りたくなかったことも知りました。

医師になることで得られることも失うかもしれないこともわかりました。

それでも医師になりたいという気持ちに変わりはありません。

何年も前から望んでいた医師にもう少しでなることができるのです。

夢や希望を叶えられたのならそれだけで十分”勝ち組”だと信じたい。

そして、医師を目指して頑張っていた頃の初心を忘れずにいることができれば、

”勝ち組”であり続けることができると願いたい。

心が折れそうになった時はいつでもこのブログに戻ってこようと思います。

 

 

・誰だって”勝ち組”になれる

私の考え方では、誰しもが”勝ち組”になることができると思います。

何も医師を目指す必要はどこにもありません。

自分の本当になりたいものやりたいことに向かって直向きに努力すれば良いのです。

 

もし、自分の子供が医師になりたいと言い出したらどうするか?

まだ私自身医師として働いたことがないのでなんとも言えませんが、

今の私のところに到達するまでも中々に険しい道のりでしたから、

自分の子供には同じような目に遭ってほしくはないなあとは思いつつも、

それが我が子の望んだことであれば、

親としてそして先輩として、温かく見守ってやりたいと思います。

 

 

・最後に

なぜ今回、「人生の勝者」などというテーマで記事を書こうと思ったのか?

 

最近の話だが、両親が親戚に対して、「息子は医学部に行ってます」と答えると、

その方から「あらまあ偉いわね〜うちの息子とは大違いだわ」と言われたそうだ。

私は「それほどまでに医学生とは特別な存在なのだろうか?」と疑問に思った。

 

うちの祖父も私が医学部であることを近所の方々に自慢して回っていたと聞いた。

小学校や中学校の同級生にも「医学部行ったの?すげー」と言われる。

祖父の自慢の孫になれたことは素直に嬉しいし、感心されるのも正直嬉しい。

しかし、何か違うような気もした。

 

これまで様々な人と関わってきて、「立派だな、見習いたいな」と

思わされるような素晴らしい人に何人も巡り合ってきた。

そんな彼らだが、みんながみんな医師あるいは医学生ではない。

ごく普通のサラリーマンだったり、土木業の方だったり、飲食業の方だったり、

あるいは工学部の学生だったり、バンドマンだったりと、本当に色々な人だった。

彼らに共通しているのは、今の自分に誇りを持って今を精一杯生きていることだ。

私の目には彼らは輝いて見えた。彼らこそ真の”勝ち組”だとそう感じた。

 

みなさんも、肩書きや置かれている状況などにとらわれず、

自分を大切にし、自分を愛し、そして自分を信じて、

必死になって今目の前にあることに取り組んでみてください。

 

 

            「幸運は用意された心のみに宿る 」

        " le hasard ne favorise que les esprits préparés "

                           

                          Louis Pasteur